揺れる羽根(TOV)注:腐向け
報酬を受け取り、露天商が立ち並ぶ賑やかな通りを歩いている時だった。
ふと、目についた店があった。
なんとはなしに近づくと、そこには色とりどりの羽根をモチーフにしたアクセサリー類が並んでいた。
七色の羽根がゆらゆら揺れる耳飾り、白い羽根のブローチ、荷や髪を縛るのに良さそうなゴム紐や、剣の柄につけられそうな小物などなど。
己の格好には基本無頓着で、性能と使いやすさで装備品を選ぶ自分には全く縁のない店である。
が、ユーリは惹かれた原因である一つの品を手に取った。
若い店主が、嬉しそうに声をかけてくる。
「いらっしゃい!お客様お目が高いですね!そいつはデザインはもとより、風魔法も付与されていて、武器につけても良いお品ですよ!」
指でつまんで持ち上げると、羽根がゆらゆら揺れている。武器につけると戦闘時は邪魔かもしれないが、歩くたびに羽根が揺れる姿を想像して、素直に良いな、と思えた。
「ユーリ!」
突然見知った声に呼ばれ、我に返った。顔を向けると遠くにカロルがいて、手を振っていた。突然の遭遇を喜び、嬉しそうに駆け寄ってくる。
「ユーリも依頼無事に終わったんだね。良かった!僕もちょうど戻るとこ!」
「ああ」
「わー!綺麗な羽飾りだね。え、それユーリがつけるの?なんか、らしくないけど、似合うと思うよ!」
「いや…」
「わ、この七色の羽飾りなんてジュディスに似合いそう!白い羽根はエステルっぽい!リタなら赤かな…パティは青で…ナンだったら黄色かなぁ…」
ナンのあたりで小声になるカロルであったが、隣に立つユーリから何の反応も返ってこない。
「ユーリ?」
目をやると、ユーリはなぜか、呆然とした様子で固まっていた。カロルの声で我に返り、羽飾りを持っていない方の手で、自身の顔を覆った。
「どうしたの?」
「いや。何でもねぇ…」
ユーリは手にしていた羽飾りを、そっと元の位置に戻した。
黒い羽根で、光に透かすと不思議と綺麗なエメラルドグリーンに光るそれ。
ユーリは無言でスタスタと店を離れた。
「お、お客さん?!」
「ユーリ?!」
カロルが慌てて追いかけてくる。
顔が熱い。
顔を見られたくなくて、追いつかれない程度の速足で歩く。
羽根の似合う仲間など沢山いるというのに。
カロルが言うまで、その事に全く気づかなかった自分に唖然とした。
1番に想像したのがあのおっさんだったとは。
(いや、レイヴンなんて鳥の名前なのがいけねぇ。そうだ、風魔法付与ならおっさんを連想しちまうのもおかしくねぇ。そうだ、そのせいだ)
宿に戻るまでの間、そう自分を納得させて気持ちを落ち着かせたものの、しばらくは八つ当たり気味にレイヴンに対する当たりが強くなり、皆に訝しげな視線を向けられる事になるのであった。
10/25/2025, 4:12:27 PM