「始まったね」
視線を上げると、水平線が金色に輝き始めていた。
少し離れたところで歓声が上がっている。男は傍らにいる恋人の肩を抱き寄せて「寒くないか」と尋ねた。
「君がいるから平気だよ。コーヒーもあるし」
そんな会話を交わしている内に太陽の輝きはどんどんその範囲を広げていく。
凪いだ海に金色の糸が織り込まれていくようだ。
「·····」
「泣いてるのか?」
不意にそんな声が聞こえて、自分が泣いていることに気付いた。
「おかしいね。もう何十回も見てるのに」
乱暴に涙を拭う。
「今年もやっぱり君と見られて嬉しいんだ·····」
「俺も」
囁いて肩を寄せる。
「今年は特等席だしね」
小さく笑うとコテンと肩に頭を乗せてくる。
「あと何度、こうして見られるか分からないけれど·····」
「来年も一緒に見よう」
金色に輝く景色を見ながら、どちらともなく呟いた。
END
「日の出」
資格取得に向けて勉強。(一日30分は集中する)
旅行する。(お金は貯めたからあとは計画)
本を読む。(ノンフィクションをたくさん読みたい)
とりあえずこんなとこかな。
目標は口に出すといいというから、目に見える形にしておく。叶うといいな。
END
「今年の抱負」
いつからか、年が明けるということに何の感慨も抱かなくなった。
挨拶としておめでとうございます、とは言うが年が明けたからといって世界が薔薇色になるわけでなし、物価は高いまま、給料はさほど上がらず、身近な家族の問題も社会問題も解決するわけでなく、世界中から相変わらず戦争は無くならない。
災害は時を選ばず否応なしにやって来るし防ぎようの無い理不尽はいくらでも襲ってくる。
年が変わったから何だと言うのだ。
母は相変わらずおせちを見ては美味しそう、などといい、父は相変わらず年が明けた、ただそれだけを酒を飲む口実にしている。
TVでは浮かれた芸能人達がはしゃいで笑って歌って。·····あぁ、なんだか。
ひどくくたびれてしまった。
END
「新年」
良いお年を~、と打とうとしてる間に年が明けました。
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
END
「良いお年を」
日本はプラネタリウムの数がやたら多いそうだ。
投映機材も世界有数の技術力を誇っているらしい。
何度か行ったが、その度に不思議な感覚に囚われる。
真っ暗なドーム。
見上げれば一面の星。
投映される星の姿以外何も見えず、自分の体さえ闇に溶けてしまったような錯覚に陥る。
その中に響くガイドの低く穏やかな声と静かなBGM。
きらきらと明滅する星をぼんやり見ていると、本当に宇宙空間に漂っているような気がしてくる。
私たちのこの、星に対する憧れはなんだろう?
夜空に輝く小さな星達に、私たちは何を見出しているのだろう?
強く、弱く。
熱く、冷たく。
赤く、青く。
輝く星達はくすくすと小さく笑うだけで何も答えてはくれなかった。
END
「星に包まれて」