「始まったね」
視線を上げると、水平線が金色に輝き始めていた。
少し離れたところで歓声が上がっている。男は傍らにいる恋人の肩を抱き寄せて「寒くないか」と尋ねた。
「君がいるから平気だよ。コーヒーもあるし」
そんな会話を交わしている内に太陽の輝きはどんどんその範囲を広げていく。
凪いだ海に金色の糸が織り込まれていくようだ。
「·····」
「泣いてるのか?」
不意にそんな声が聞こえて、自分が泣いていることに気付いた。
「おかしいね。もう何十回も見てるのに」
乱暴に涙を拭う。
「今年もやっぱり君と見られて嬉しいんだ·····」
「俺も」
囁いて肩を寄せる。
「今年は特等席だしね」
小さく笑うとコテンと肩に頭を乗せてくる。
「あと何度、こうして見られるか分からないけれど·····」
「来年も一緒に見よう」
金色に輝く景色を見ながら、どちらともなく呟いた。
END
「日の出」
1/3/2026, 3:24:18 PM