いつからか、年が明けるということに何の感慨も抱かなくなった。
挨拶としておめでとうございます、とは言うが年が明けたからといって世界が薔薇色になるわけでなし、物価は高いまま、給料はさほど上がらず、身近な家族の問題も社会問題も解決するわけでなく、世界中から相変わらず戦争は無くならない。
災害は時を選ばず否応なしにやって来るし防ぎようの無い理不尽はいくらでも襲ってくる。
年が変わったから何だと言うのだ。
母は相変わらずおせちを見ては美味しそう、などといい、父は相変わらず年が明けた、ただそれだけを酒を飲む口実にしている。
TVでは浮かれた芸能人達がはしゃいで笑って歌って。·····あぁ、なんだか。
ひどくくたびれてしまった。
END
「新年」
良いお年を~、と打とうとしてる間に年が明けました。
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
END
「良いお年を」
日本はプラネタリウムの数がやたら多いそうだ。
投映機材も世界有数の技術力を誇っているらしい。
何度か行ったが、その度に不思議な感覚に囚われる。
真っ暗なドーム。
見上げれば一面の星。
投映される星の姿以外何も見えず、自分の体さえ闇に溶けてしまったような錯覚に陥る。
その中に響くガイドの低く穏やかな声と静かなBGM。
きらきらと明滅する星をぼんやり見ていると、本当に宇宙空間に漂っているような気がしてくる。
私たちのこの、星に対する憧れはなんだろう?
夜空に輝く小さな星達に、私たちは何を見出しているのだろう?
強く、弱く。
熱く、冷たく。
赤く、青く。
輝く星達はくすくすと小さく笑うだけで何も答えてはくれなかった。
END
「星に包まれて」
古いラジカセのスイッチを押すと、ノイズ混じりの音が流れてきた。
しっとりとしたスローテンポの曲が流れる。なんという曲かは分からなかった。
「踊ろう」
手を差し出され、僅かに戸惑う。
その手を取るべきか悩んでいると、なかば強引に引き寄せられた。
「揺れてればいいから」
錆び付いた音に合わせてぎこちなく肩を揺らすとくふ、と小さく笑う声。
「それでいいよ」
相手は僅かに目を伏せて、心地良さそうに男に身を預ける。最小限に絞ったライトが、二つの揺れる影を壁に映し出す。
言葉は無い。
互いに触れ合う場所だけが、火がついたように熱い。
「君だけだ」
花びらがひらりと落ちたような、そんな声だった。
肩口に寄せられた唇がぽつりと漏らした声。それは普段からは想像もつかないほどに余りに儚い声だった。
「この地獄には、もう君と私しかいないんだ」
官能的に体を揺らしながら全てを明け渡したようなその声は、男の胸に強い衝動を呼び起こす。
「離さないで」
その言葉に「当たり前だ」と短く返す。
――薄氷の上で二人、死ぬまで踊り続けよう。
END
「静かな終わり」
〝あなたの人生を曲線グラフにしてみて下さい〟
それに何の意味があるのか。
上手くいっていた時期と下降していた時期を視覚化して客観的に見るため、と誰かが言っていた。
けれど、そんな簡単なもので表せるほど私の人生は単純じゃない。
私の〇〇年は一本の線を上下させるだけで説明出来るようなものじゃない。
私の人生は私しか知らない長い旅で、その結末はまだ私自身ですら分からない。
その旅が私の心に何をもたらすのかも。
旅はまだ途中なのだから。
END
「心の旅路」