再会を望むほど忘れ難い人とは、どんな人だろう。
それほどの強い印象を与える人なんて、いるのだろうか。
またいつか会いたい――。
そう思えるほどの誰かに会えたなら、空っぽな私にも何かが生まれるのだろうか·····。
END
「またいつか」
子供の頃、夜に出歩くと必ず空を見上げて一際強く輝く星を見つけた。多分北極星だったと思う。
比較的分かりやすいそれを見つけて、見上げたままひやりとする夜気の中を歩くのが好きだった。
夜の道は暗くて、静かで、昼とは違う顔をしていた。
少し怖いと思う時もあったが、上空に輝く星を見ると不思議と楽しくなった。
「今もそう」
空を見上げ、ぽつりと呟く。
「どこにいても、何をしてても、空を見上げてあの星を見つけると嬉しくなるんだ」
誰に告げるでもなく呟く。
「ずっと追いかけていたからかな」
――それとも、こちらが追いかけられていたのか。
一際強く輝く星は、何も語ってはくれない。
END
「星を追いかけて」
〝今を生きる〟
当たり前と言えば当たり前のことを、あえて言葉にしなければ前を向いて歩けない。
昨日という過去をどういう形であれ乗り越えた事を誇っていいはずなのに、何故かそれを出来ないでいる。
過去を生きて、今を生きて、それを乗り越えた者にしか未来を生きることは許されない。
不確かなこの世界で、一日を過ごす事のなんと難しいことか。
〝今を生きる〟
この言葉の普遍性と実践することの難しさを今、しみじみと感じている。
END
「今を生きる」
窓の縁に長い足を掛けて、男は空を眺めている。
ここは軍のトップの執務室で、自分は現在仕事中であるにも関わらず、である。煙草を吸っていないだけマシだと思いながら、彼は物言わぬその背を見つめた。
「·····」
男とは長い付き合いだったが、こんなにも長い時間無言でいるのを見るのは初めてだった。
長期任務から帰ってきた男はいつになく憔悴しきっていた。大体の事情は把握していたから何も言わなかったが、男の中で何かが壊れてしまったことを、彼はその表情で悟った。
疲れ果てたと思われた男はしかし、帰還した翌日には報告書を携えてこの執務室にやって来た。
いつもと変わらぬ表情に驚かされたのは自分の方だった。一日の休養で立ち直れる任務では無かったはずだ。それなのに男はいつものように飄々とした表情で、「報告書、持ってきたよぉ」と紙の束を持ってきたのだった。
「·····」
男は何も語らない。
彼の地で何があったのか。男は何を斬り捨てて、その手に何が残ったのか――。男の口から語られるまでは何も聞くべきではないと、彼は思っている。
「明日から」
ずっと無言だった男が不意に口を開いたのは、彼が二杯目のコーヒーを淹れ始めた時だった。
「明日から復帰するよ」
その声も表情も、いつもと変わらない。
「·····いいのか」
「いいに決まってるでしょ。誰だと思ってんだい?」
「しかし·····」
彼が何か言おうとするのを遮るように、男は続けた。
「君が命令してくれるならどこでも行くよ。だから言ってくれよ、〝飛べ〟って」
窓の縁に掛けていた足を下ろし、男は彼に向き直る。
ニコリと微笑むその顔になぜか空恐ろしいものを感じて、彼は続く言葉を発することが出来なくなった。
「もうそれしか残ってないんだ」
「――」
「どこでも行くよ。何をすればいい? 誰を消す?」
「おい·····」
「あぁ、決着つけなきゃいけないのが一人いるね。行こうか? 」
「おい!」
「命令してくれ××××××。飛べって言ってくれ·····」
「·····」
「後生だからよ·····」
この時初めて、彼は軍人という仕事を嫌だと思った。
END
「飛べ」
宝くじでも当たれば人生一発逆転、忘れられないspecialdayになるのになぁ!!
そういえば、昔の胡散臭い広告にあった札束の風呂に浸かるやつ、最近見なくなったね(笑)。
END
「special day」