子供の頃、夜に出歩くと必ず空を見上げて一際強く輝く星を見つけた。多分北極星だったと思う。
比較的分かりやすいそれを見つけて、見上げたままひやりとする夜気の中を歩くのが好きだった。
夜の道は暗くて、静かで、昼とは違う顔をしていた。
少し怖いと思う時もあったが、上空に輝く星を見ると不思議と楽しくなった。
「今もそう」
空を見上げ、ぽつりと呟く。
「どこにいても、何をしてても、空を見上げてあの星を見つけると嬉しくなるんだ」
誰に告げるでもなく呟く。
「ずっと追いかけていたからかな」
――それとも、こちらが追いかけられていたのか。
一際強く輝く星は、何も語ってはくれない。
END
「星を追いかけて」
7/21/2025, 4:44:09 PM