せつか

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6/16/2025, 3:09:48 PM

子供の頃の記憶は曖昧で。
アパートの階段から落ちたことや、保育園のプールで溺れたことはやたら憶えているのに、仲のよかった友達の名前や顔はおぼろげにしか憶えていない。
小学校、中学校もそんな感じで、やたら鮮明に憶えていることと、ロクに憶えていないことがある。

そんなものなのだろうか。
自分の頭も他人の頭も、中を見ることは出来ないから、体験や知覚、学習で得たものをどうやって整理、ストックしてあるのか分からない。
思い出せないことは生きていくうえでさして大切なものではないのかもしれない。
でも、仲のよかった友達の顔を思い出せないのは·····少し寂しい。
医学が発達して、人の記憶をすべて辿ることが出来たら、いつかこの寂しさは消えるのだろうか。


END


「記憶の地図」

6/15/2025, 3:52:01 PM

いつか、死ぬまで使い続けていたいと思えるような素敵な食器や服や靴を手に入れたい。
直して直して、ずっと使えるようなものを。


END


「マグカップ」

6/14/2025, 10:43:00 PM

「もしも君が」
スプーンで珈琲をかき混ぜながら、彼は言った。
「今と違う姿をしていたら、僕達は出会わなかったかもしれないね」
ピンクのメッシュを入れた私の髪に、彼の視線が注がれる。私は彼の鼻先についたピアスを見つめながら、私もそうかも、と答えた。
たまたまライブハウスのラウンジで、たまたま同じドリンクを注文した。そんな出会い。
目が合って「それ、かっこいいね」と同時に呟いた。

メッシュも服も、アクセサリーもタトゥーも、今のところ変えるつもりは無い。
彼もピアスはずっとやめないし、変なフレームの眼鏡はこれからもどんどん増やすつもりだと言っていた。

「でも、もし」
珈琲にブランデーを数滴落としながら、彼は続ける。
「君がその姿を全く違うものに変えちゃっても、今のまま君を好きでいる自信はあるよ」
「――」
実は少し、今追いかけてるバンドに飽きている。
最近一人でいる時に聞いてる曲は、しっとりした女性ボーカリストの曲だ。シンプルなワンピースで歌う彼女のコンサートに、ちょっと行ってみたいと思っている。彼を誘ってみたら、どんな反応をするだろう。
「私もそうかも」
さっきと同じ答えをすると、彼はピアスのついた鼻先にちょっと皺を寄せて笑った。


END


「もしも君が」

6/13/2025, 2:52:15 PM

昔ある人が「花火は戦争の時の爆撃を思い出すから嫌い」と言っていた。小学生の時は地元の花火大会に行くのが大好きだったから、その人の言葉はある意味衝撃だった。
戦争を体験した人が今、花火を見てある感慨を抱くことが出来るのは、ある意味この国が現状平和だからだ。戦争を体験していない私は、その感覚が分からない。だからこそ、こうした身近な人達の何気ない一言にアンテナを張り巡らしていたい。

生まれた時から爆撃音しか知らない人もいるのだという想像を、忘れないようにしたい。

昔読んだ本で、ベートーヴェンはナポレオン軍に対する怒りから「皇帝」という曲を作ったという話を読んだ。それが本当かどうかは分からないけれど、戦争から生まれた音楽や芸術はある。
爆撃音しか知らずに育った人が、いつか世界を変える音楽を作る日が来るかもしれない。
それはその人にしか作れない、その人だけのメロディなのだ。

END



「君だけのメロディ」

6/12/2025, 1:47:12 PM

続く言葉がYouとは限らない。
meかも知れない、herかhimかも知れない。
もしかしたらNYみたいに地名かも知れないし、chocolateみたいな食べ物の名前かも知れない。

恋を連想してしまうけど恋愛感情ではなく愛着、のようなものなのかもしれない。

どちらにせよ、マイナスイメージの無い言葉だ。

Ioveという言葉に対する、ぼんやりした雑感。


END


「I Iove」

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