「夢へはばたけ!」とか「夢へ一歩前へ!」とか。
エクスクラメーションマークを使ってまで主張したい強い想いは、多分もう無い。
就職氷河期と言われる時代を生きた私は、挫折と妥協と諦めの方が圧倒的に多い人生だった。
そろそろ人生の折り返し地点に入ろうという頃。
ようやく現実の中で折り合いをつけながら生きるという、心に負担をかけない生き方や考え方が分かってきた。
でも、桜舞うこの季節。
入学式、入社式などでキラキラとした笑顔を見せる若い人達を見るとふと思う。
「夢を叶えられていいなぁ」という羨望と、「頑張れ」という老婆心めいたもの。
現実は無理ゲー、なんて表現もあるけれど、お互いなんとか生きていこうね。
END
「夢へ!」
1月以来、更新の止まってる相互さん、元気かな。
〝便りの無いのは良い便り〟っていう言葉があるけど、やっぱり少し寂しい気持ちはある。
でも、ネットの繋がりはそういうものだし、知りようが無いからお元気でいてくれる事を祈るしかない。
また戻ってこられたら、お話相手になってくれたら嬉しいな。
END
「元気かな」
あなたとの約束は、かなえられそうにありません。
キラキラした瞳で夢を語ったあの頃は、もう遠い遠い、思い出すのもおぼろげな過去になってしまいました。
今の私はその日その日をかろうじて生きているだけの、同じ日々をただ繰り返すだけの、ゼンマイ仕掛けのロボットのようなものなのです。
努力が足りなかったのでしょうか?
才能が無かったのでしょうか?
それとも、その両方でしょうか?
今となっては分かりません。
あなたとの約束を果たして、再び笑って会える日を楽しみにしていた筈なのに。
もう合わせる顔がありません。
今でもキラキラと輝くあなたは、私にはあまりに眩しくて、電車に乗ろうとする私の足を鈍らせるのです。
窓ガラスに映る疲れ切った顔。
笑おうとして失敗し、歪んだ唇。
よれよれの上着に古びたカバン。
もう身の回りを気にする余裕も無くなりました。
今度、あなたの目に私が映る時には·····あの日の約束通り驚かせることが出来るでしょうか。
さようなら。
私はずっとあなたが大好きで、大好きで··········大嫌いでした。
END
「遠い約束」
ウツボカズラの消化液に浸されながら、ハナカマキリに足や腹をもがれながら、虫は何を思うのだろう。
花らしからぬ生態に捕らわれながら、虫らしからぬ生態に捕らわれながら、彼らは互いの生を羨むことも、己の生を嘆くこともない。
誘われて、惹かれて、捕らわれて、死ぬ。
それだけの事だとただ淡々と受け入れているように見える彼らの生き方は、ある意味潔く見える。
そしてそれは、ただじっと獲物が来るのを待ち続ける捕食者にも同じ事が言える。
過剰に望まず、誘って、騙して、待って、捉えて、糧にする。それだけを繰り返す、ある意味見事な生き方。
植物や昆虫の生態を知れば知るほど、美しいとはどういう事か、を考えさせられる。
END
「フラワー」
「ピリ・レイスの地図って知ってる?」
「当時発見されてなかった筈の南極大陸の形を正確に描いてるオーパーツ、だろ?」
「そうそう。地図って面白いよね。今の地図もある筈の建物が書かれてなかったり、この線なんだろ? ってのがあったり道が突然途切れてたり」
「ドライバーから言わせて貰えばそういうおかしなのは無い方が有難いけどな」
「GPSとか色々発達して正確な地図が書ける筈なのに、そういう〝不可解〟があるのがめっちゃ面白い」
「おい、話聞いてるか?」
「というわけで、今度の旅行ですが、ここにします!」
「·····この牧場って」
「そ、こないだYouTubeで見たヤバいとこ」
「本気かよ」
「昼間に行くから大丈夫だって。しかもこの地図最新版だよ。ほら、ここ。この新しい道抜けたらこっちの〇〇市に出るから、そしたら海で遊べる」
「うーん·····」
「あれ? 怖い?」
「怖かねえけど」
「ここのホテル、全室オーシャンビューの新しいとこなんだよ。心霊スポット巡った後は海辺のホテルでのんびりしよ」
「温度差」
◆◆◆
「ホントにこの道で合ってんのか?」
「その筈だけど·····、ナビがバグって画面がおかしくなってるよ」
「地図はどうしたんだよ」
「今見てるよ·····うぇっ、なにこれ!?」
「急に大声出すな!」
「めちゃくちゃ乱丁になってる! なんで?」
「はあ?」
「ページが、ってか、道路も何もぐっちゃぐちゃでキモい!! 一昨日までこんなの無かったのに!」
「おい、じゃあ俺ら今どこ走ってんだよ」
「わかんない」
「·····電話! ホテルかどっかに·····」
「ウソでしょ、圏外になってる·····」
「はあ!?」
「怒鳴んないでよ!」
「マジかよ勘弁してくれよ·····」
カエラセテクレ
「何か言った?」
「言ってねえよ!」
「地図が、買ったばっかなのに·····ここどこ? もう帰りたい!」
「それはこっちの台詞だよ! クソ、付き合うんじゃなかった!」
カエラセテクレ
「あ!ナビ戻っ·····!」
「前!」
アア、コレデカエレル·····。
END
「新しい地図」