夜空に輝く無数の星。
小さな小さなきらめきの一つ一つが、それぞれ何億光年も離れていて、それぞれがまったく違う性質を持っている。
私達は遥か天上で輝く星々に憧れの眼差しを向けながら、いつか星の海に到達する日を夢見ている。
「私達がこうして見上げているように、あの星のどこかから私達を見上げている誰かがいるのかもね」
「あぁ、地球によく似た星は必ずあるって、誰か言ってた気がする」
「いつか出会えたら面白いね」
◆◆◆
「·····だって」
「やめてくれ。あんな原始的な星の生き物なんて、こうやって遠くから観測するだけで充分だよ」
「観測するってことは興味あるんじゃない?」
「とんでもない。憧れを口にしながらゴミを撒き散らす彼等がこれ以上近づかないように、監視してるだけだよ」
「分かってはいるみたいだけどね、彼等」
「分かっているなら早く片付けろってんだ」
「片付けられるだけの技術が彼等の身についたら、それこそ私達の星にまで近付けるんじゃない?」
「それは無理だよ」
「そう?」
「そうなる前にこちらから介入するから」
「ああ、なるほど」
「少なくともあと千年は無理かな。彼等の星から戦争が無くなるまで、それくらいかかりそうだから」
「私は結構好きなんだけどな、彼等のこと」
〝ヒト〟には見えないその小さな宇宙船は、地球をぐるりと一周するとやがてゆっくりと離れていった。
END
「星」
往年の名作漫画にあった台詞。
「世界から戦争が無くなりますようにって·····祈ったわ」
流れ星を見ながらそう言った姉と、並んで星を見上げる幼い弟。あの姉弟の願いはいまだ叶えられていない。
あの名シーンが発表されて何十年経ったのか。
戦争も、暴力も、貧困も、差別も、何一つ地球から無くなっていない。
あの願い事を祈った人は、世代を超えて数え切れないほどいるだろうに。
··········ひょっとして、強い力を持つ〝誰か〟が、願っているのだろうか。
「戦争がずっとずっと続きますように」と·····。
END
「願いが1つ叶うならば」
なぜこの字を当てるのだろう?
どちらも「あ」とは読まないのに。
調べたら、成り立ちとしては烏の鳴き声と鳴子板の形で、音を鳴らして鳥や獣を追い払う時の音だと出ていた。
烏の鳴き声、鳴子板、鳥や獣を追い払う·····。
感情表現としてはあまり喜ばしいことでは無さそうな気がする。
END
「嗚呼」
一番奥のボックス席でコーヒーを一杯。
会いたい時は帰り際、そこにメッセージを忍ばせる。冬はソーサーの下にメモの切れ端を。夏はコースターに直接書き込む。
彼が見つけてくれれば良い。もし彼以外の誰かがそれを見つけたとしても、それならそれでその日は諦める、それだけだった。
待ち合わせはいつもの場所。約束の時間に彼がいればそのまま二人でしばらく歩いて、いつものように共に夜を過ごした。
甘い言葉も、口づけも。交わした記憶はろくに無い。
ただお互いに居心地がいい。それだけだった。
あの部屋は私と彼しか知らない場所で、飽きたら契約更新をしないでそのまま別れよう、そう決めていた。
私と彼しか知らない秘密の場所。
ベッドが一つ。小さなテーブルと椅子が一組。
それ以外何も無い。それで良かった。
季節が二度巡り、部屋の窓から桜が見えるようになった三度目。
何度メッセージを残しても彼は待ち合わせ場所に来なくなった。
大切な人が出来たのだろう。
それは彼自身なのかもしれない。
それならそれで良かった。
私はまた別の部屋を借りて、彼以外の誰かと同じように過ごすだけ。
あの店のコーヒーは美味しかったけれど、もういい。
また別の店を探すだけ。
そうして私は、街をさまよう。
END
「秘密の場所」
ラララ、の後に「Lovesong」と続くか「む〇じんくん」と続くか「科学の子」と続くかで世代とか興味が分かれる気がする(笑)。
END
「ラララ」