ある種の蝶は海を渡るという。
標高の高い山を越える種もあるという。
私たち人間は、蝶より遥かに長い寿命と、遥かに大きな体と、遥かに重い脳を持っているというのに、多くのものを作り出せるというのに、いまだに自力で空を飛ぶ事すら出来ないでいる。
蝶のように、あるいは鳥のように。
いつか風に乗って空を飛べるようになる日が来るのだろうか?
そしてもしそれが叶った時·····。それを叶えた人類は今の私たちと〝同じ姿〟をしているのだろうか?
私たちにそれを知る術は無い。
END
「風が運ぶもの」
疑問に感じることはいっぱいある。
でもそれを口にすると「めんどくさい奴」と思われる。だからどうしても納得出来ないこと以外は黙ってる。黙ってるだけで、疑問が消えたわけではないからずっとモヤモヤを抱えている。
「めんどくさい奴」と思われない方法はないものだろうか。
END
「question」
〝指切りげんまん 嘘ついたら 針千本 飲ます 〟
最近、針千本どころか万本飲まなきゃいけないんじゃない? っていう人が多くないですかね·····。
END
「約束」
ひらひら、ひらり。
薄紅色の花が舞う。
春の風が枝を揺らす。そのたびに舞う、小さな花びら。雪のように儚くて、でもあたたかい小さな欠片。
風流だねえ。
ひらひら、ひらり。
歩道橋のど真ん中。
男が一人、笑いながらボストンバッグをぶちまけている。舞っているのはいくつもの紙片。
お金だ。数え切れない程の紙幣が舞っている。
男に何があったんだろう。
風流とはほど遠いけど、昔は時々あった光景。
時代かなぁ。
END
「ひらり」
××××××? 誰かしら?
あぁ、あの醜いもの。
そうね。私の役には立ってくれたけれど·····やっぱり生理的に受け付けないものってあるでしょう?
これ以上お近づきにはなりたくないわね。
恩? あの醜いものに? 私が?
おかしなことを言うわ。
あの醜いものが私のそばにいることが出来た、それだけで奇跡みたいなことでしょう?
それ以上何を与えろというのかしら?
もうおしまい。
あの醜いものは、短くとも良い夢を見られた。それだけのことよ。
××××××·····そもそもこの名前だって本当の名前じゃないのだし。
アレは一体誰·····いえ、何だったのかしら?
あなた、何か知っていて?
◆◆◆
現実感が無い。
足元がふわふわする。いや、自分の足がもう足じゃないみたいだ。溶けて、沈んで、ぐらぐらして、何も考えられなくなる。
でも、ただ一つ分かるのは。
彼女の言葉が何一つ間違っていないこと。
そしてそれを、僕自身が分かっていたこと。
僕は誰。僕は何。
僕は。
僕は·····。
END
「誰かしら?」