愛してる、とも好きだ、とも言えない関係だった。
言えるわけがない、言ってはいけない関係だった。
多くのものを傷付けて、多くのものを失った。
そうして互いしかいなくなって、それでもいいと思ってしまった。
そんな地獄のような関係を、愛だの恋だの甘やかな言葉で飾っていいはずがなかった。
だから愛してる、とも好きだ、とも、言わずに二人で歩き続けた。
それでも互いが必要だと、互いが手放せないのだとどうして確信出来たのか。
「·····」
愛を語る言葉より、互いの全てを受け止める強さを信じたからだ。醜い心も、弱い部分も、全てを受け止める強さがワタシを惹き付けて、決して放さぬと決めさせた。
愛してる、とか好きだ、とか、千回言うよりたった数回腕を伸ばしてくれたことが、ワタシにとっての〝愛言葉〟だった。
END
「愛言葉」
なくても生きていくことは出来る。
あった方が人生の選択肢が増えるし彩り豊かになる。
人であっても、人以外のものであってもいい。
数が多ければいいというものでもない。
そういうものだと思う。
END
「友達」
「行かないで」
そう叫べたら良かったのだろう。
もっと幼い子供の頃に。
そう叫んで、他人の目など気にする事なく泣き喚いて、子供なりに〝譲れないもの〟があるのだと、思い知らせていれば良かった。
置いていかれること、意志を黙殺されること、背を向けられることが怖いのだと、力の限りに叫べば良かった。
「〝聞き分けのいい〟子供だったからな、私は」
そう言って、皮肉げに唇の端をつり上げる。
グラスにはまだ半分ほどワインが残っていたが、何故か飲む気にはなれなかった。
テーブルに置いた手に、ひやりとした手が重なる。
指をなぞる手の感触がくすぐったくて逃れると、手はまたすぐに追ってきた。
「言っていいよ」
「――」
「何が欲しいのか、何が怖いのか。全部私に教えて欲しい」
「·····もう子供じゃない」
「関係ないよ。私はもっと、あなたの事が知りたい」
「·····」
「なんだってしてあげるよ」
再び重なる手のひらに、わずかに力がこもる。
その強さが心地よいと感じてしまうほどに、絆されている自分が何だかおかしくて、私はさっきとは違う笑みが浮かぶのを抑えられなかった。
END
「行かないで」
この言葉は本当は正確ではない。
上へ上へと行けば青い空は無くなり真っ暗な宇宙になるし、水平に進めば青い空じゃなく朝日の白や金、夕焼けのオレンジや星と月の輝く夜になっていたりする。それでも明確な境い目なんてものは無くて、いつの間にか空が宙になっていて、青空は朝日や夕焼けや夜空になっている。
〝宇宙の宙〟を〝ソラ〟と読むのはなんか素敵だ。
私達が見上げる空が、果てしなく続く星の海と繋がっているのだと思わせてくれる。
この星のあらゆる場所がソラで繋がっているように、この星とあらゆる宇宙もソラで繋がっている。
「どこまでも続く青い空」は正確では無いけれど、心情的には〝正しい〟と思う。
繋がっているソラのどこかは、澄み渡るような青空だから。
END
「どこまでも続く青い空」
毎年毎年何で着なくなったのか分からない服が出てくるのは何故だろう(笑)?
それにしても、こうも気候が変動して日ごとに暑くなったり寒くなったりすると、〝衣替え〟なんて行事みたいにやる必要が無くなってる気がする。
大きな家のウォークインクローゼットみたいに、オールシーズン服を下げておけるスペースがあればなぁ。
END
「衣替え」