ライブで歓声を上げる。
カラオケで熱唱する。
譲れない何かの為に怒りの声を上げる。
戦う誰かを応援する。
恐怖に駆られて叫ぶ。
私にはどれも縁が無い。というか、どうもそういう事をしたいという衝動が起きない。
応援上映とか、絶叫上映というものにも興味がわかない。そういえば、ジェットコースターに乗っても「楽しい!」「怖い!」「気持ちいい!」と思ってはいても言葉は出なかった。
変に引きつった声を上げていただけだから、傍から見たら奇異に映っただろう。
喜びや、楽しさや、怒りや、恐怖。
感情は確かにあるのに、それを発する言葉が、声が出ない。
声が枯れるまで、心のままに叫ぶ事が出来る人が、少し羨ましい。
END
「声が枯れるまで」
雨、という歌があった気がする。
でも本当は始まりなんて、全てが終わった後でないと何が始まりで、何が始まったのかなんて分からないと思う。結局やり直しが出来ないところまで進んで初めて、人は何かが始まっていたこと、そして終わりがやってくることを知るのだ。
END
「始まりはいつも」
すれ違い、通り過ぎ、気付いて振り向いた時、運命は動き出すのだろう。
彼にとっての運命は、たった一人だった。
多くのすれ違った人にとって運命だった彼も、たった一人の為に狂わされた一人だった。
叶わなかった思いは、満たされなかった未練は、澱のように降り積もる。
狂わせて、狂わされて、運命になれなかった喜劇と、運命になってしまった悲劇を見つめながら、思いの欠片は降り積もる。
暗い暗い湖は、こうして閉ざされてゆくのだろう。
それだけの、話。
END
「すれ違い」
やけに高い青空を見上げた。
飛行機が一機、西から東へ横切っていく。
白い線が大空のキャンバスに描かれる。
何故か涙がこぼれた。
END
「秋晴れ」
自分がされて嫌だったこと。
自分がしてしまった失敗や失言。
人を傷つけたと気付いてしまったこと。
恥をかいたと思い知らされたこと。
忘れたい、リセットしたい。
そう思っていたけれど、それが積み重なった結果が今の私なんだよな。
END
「忘れたくても忘れられない」