せつか

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愛してる、とも好きだ、とも言えない関係だった。
言えるわけがない、言ってはいけない関係だった。
多くのものを傷付けて、多くのものを失った。
そうして互いしかいなくなって、それでもいいと思ってしまった。
そんな地獄のような関係を、愛だの恋だの甘やかな言葉で飾っていいはずがなかった。

だから愛してる、とも好きだ、とも、言わずに二人で歩き続けた。

それでも互いが必要だと、互いが手放せないのだとどうして確信出来たのか。
「·····」
愛を語る言葉より、互いの全てを受け止める強さを信じたからだ。醜い心も、弱い部分も、全てを受け止める強さがワタシを惹き付けて、決して放さぬと決めさせた。

愛してる、とか好きだ、とか、千回言うよりたった数回腕を伸ばしてくれたことが、ワタシにとっての〝愛言葉〟だった。


END


「愛言葉」

10/26/2024, 1:38:51 PM