雨上がりに草の先につく玉の露。
凍てついた冬の夜空に輝く星。
ビル街の片隅で弱々しく明滅する電球。
かさついて荒れた指先に丁寧に塗られたネイル。
天敵から逃れようと必死に花の中に潜る虫の羽根。
小さな子供が大事そうに抱えた人形の、プラスチックで作られた丸い瞳。
幼い子供に自分の食事を分け与える母の綻んだ唇。
そういったものを見つけられる人なのだろう。
そんな些細な、小さなきらめきを見つけられる人だから、誰もが惹き付けられるのだ。
恋なのか、愛なのか。それにどんな名前をつけるのが正解なのか、それは誰にも分からないけれど。
小さなきらめきを見つけられる彼だから、見つけてくれる彼だから、彼自身もまた美しく輝いて見えるのだ。
そんな彼の背中を見つめて、私はそのきらめきの眩さに俯くことしか出来なくなるのだ。
END
「きらめき」
好きな色、好きな季節、好きな料理、好きな本。
嫌いな食べ物、苦手な動物、苦手な家事。
何でもいいから知りたい。
興味のあること、ついやってしまう癖、後回しにしてしまうこと、子供の頃のあだ名、家族構成。
どんなことでも教えて欲しい。
些細なことでも構わないのです。
私の中にある真っ白なノートを、貴方で埋めつくしたいのです。貴方という存在は、私にとって謎だらけで。生涯をかけてでも貴方という存在を解読したいのです。
これが多分、最後の恋なんです。
だから·····ストーカーなんて言わないで。
END
「些細なことでも」
色々な事にイライラして、体のあちこちが重くて、何もやる気が起こらなくて、明日が来ることが憂鬱で、でもずっと寝てるわけにもいかなくて、自分の顔から表情が無くなっていくのが分かって、火が消えそう、というのはこういう事なんだろうと思う。
人の寿命が蝋燭の火で表現されてるのは落語の「死神」だったか。
蝋燭の火というのは目に見えて現れる老いや病や傷だけじゃなく、心がすり減っていくことも表現してるんじゃないかと思う。
消えそうな蝋燭に何を継ぎ足せばいいのだろう?
美味しい食事、充実した余暇、寄り添ってくれる友。
そういったものを少しずつ継ぎ足して、もう一度火を強くすることが出来れば、また一歩踏み出せる。
とりあえず夜中にスイーツでも食べて、切り替えますか。
END
「心の灯火」
開かない、じゃなくて開けない。
開きたいけれど怖くて開けないとか、
開けない事情があるからそのままにしている。
例えば相手が仕事の上司とか同僚ならシフトの事かな? とか、リアルでも会ってる友達とかなら遊びの誘いかな?とか内容も想像つくけど、そうじゃない相手だと意外と開くのが怖い。
特に怖いのが家族や親類。
顔を合わせたり、電話の方が伝わり安いのに敢えてLINEで、というのが怖い。
深刻な話だったらどうしようとか、色々考えてしまう。
だから、やめちゃった。
END
「開けないLINE」
何をもって「完全」と言うのか。
そもそも完全という言葉を作った人間自体が不完全なのだから、〝完全な人間〟とは何かと言う事を定義しないとこの話は堂々巡りになると思う。
思慮深い、頭がいい、造形がいい、体力がある、スポーツ万能、歌が上手い、絵が上手い、人当たりがいい·····他にも人の美点と言われる点は色々あるけど、それも別の視点、別の価値観から見たら反転したりする。
まずは〝完全な人間〟を定義して頂かないと、私はそれに反論する術を持ちません。
良かった、君がそう言ってくれて。
? 意味が分かりません。
それこそが、〝完全な人間なんていない〟証明になるんだよ。
END
「不完全な僕」