せつか

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4/17/2024, 4:18:47 PM

桜散る 梅はこぼれる 菊は舞う 牡丹崩れて 朝顔しぼむ

どれもその花の終わりを見事に表した言葉だと思う。
人もこんなふうに例えられるような、その人らしい終わり方を迎えられたらいい。

◆◆◆

そんな事を笑いながら言うものだから、僕はあなたがいつか消えてしまうのではないかと、不安でたまらないのです。
春なのに、胸に冷たい風が吹くのが悲しくて、僕は先を歩くあなたの手を思わず掴んでしまったのでした。

END


「桜散る」

4/16/2024, 3:52:47 PM

「夢を託されることにも、自身が夢を見ることにも、もう疲れてしまったんだろう?」
男の声はいつになく穏やかだった。

「いいさ。ここはそんなこと考える必要の無い場所なんだから」
そこは彼の記憶には無い場所だった。
一面花が咲き乱れ、かぐわしい香りが漂っている。しかしよく見るとその花々は現実には存在しない色と形をしていて、彼はここが夢の世界なのだと悟った。
「そう。ここは夢そのもの。考えなくても存在する、現実には有り得ざる世界だよ」
男の声がいつもより近くに感じて、彼は僅かに身構えた。そんな彼に、男は肩を竦めて小さく笑う。
「そんな顔しない。別に取って食おうってワケじゃないんだから」
飄々とした物言いに毒気を抜かれて彼は立ち尽くす。男は満足げに目を細めると傍らに咲く白い花に手を伸ばした。

「綺麗な夢を見るのも、誰かに夢を託されるのも、君の心がそれに見合う美しいものだからだ。君はいつも自分を卑下するけど、私は君の過ちの中に、確かに美しいものを見たよ」
甘い匂い。目眩さえ感じる。
「でも、ね」
白い花が男の手の中でみるみる萎れていく。
「本当は、美しくなくたっていいんだ。たまには何もかも手放して、夢も見ないほど深い眠りに落ちるのもいいんじゃないかな?」
萎れて枯れた花びらが、一枚ずつ落ちていく。
はらはらと落ちる花びらにつられるように彼は膝をつき、咲き乱れる花の中に横たわる。
男はそんな彼を見下ろすと、唇に一層深い笑みを刻んだ。
「――おやすみ。ゆっくり眠るといい。ここは夢。現実には有り得ざる場所。何が起ころうと目覚めればみんな〝無かったこと〟になるんだからね」
悪戯を思いついたような男の、人ならざる色をした目だけが爛々と輝いていた。


END


「夢見る心」

4/15/2024, 3:50:53 PM

恋の話になれば良かった。
友情の話になれば良かった。
そういう〝ハナシ〟になれば話す方も聞く方も少しはドラマチックに響くかもしれないのに。

暖簾に腕押しならまだマシかもしれない。
泥の中に手を突っ込んで、何も掴めずただ汚れて疲れるだけの虚しさ。
これをあと何年続けなければならないのだろう。

届かぬ想いが恋なら良かった。
ただただ会話が成立しないこの疲労感。

やっぱり一人が一番ラクだ。

END


「届かぬ想い」

4/14/2024, 2:10:45 PM

あなたを熱心に信じている人達ほど苦しんでいるような気がするのは、私だけでしょうか?


「神様へ」

4/13/2024, 11:41:17 PM

雲ひとつない空に、白い直線が描かれる。

誰もいない川べりに座り見上げていると、校庭のグラウンドに石灰で白線を描いていた小学生の頃を思い出した。あれはラインパウダーと言うらしい。今は石灰ではない別のものを使っていると、何かで読んだ。
あの頃は夢を信じ、頑張ればいつかは報われるという教師の言葉を疑いもなく信じていた。
社会に出て、努力だけではどうにもならない事があることを思い知らされた。

飛行機がもう一機、空を横切る。
真っ青な空が白い線で切り分けられていく。
「·····」
小さく切り分けられた空は、そのまま剥がれ落ちてしまうのではないかと変な想像をしてしまう。
剥がれ落ち、めくれた空の向こうには真っ黒な夜が口を開けていて、いつかそこから〝よくないもの〟が溢れ出してくる気がする。

誰もいない川べりで立ち上がる。
ゆっくりと川面に近づいていく。
空を見ながら、一歩ずつ。

小さく切り裂かれた空は、幼かった頃の私だ。

夢も、努力も、塗り潰された私には、この青が眩しくて目に痛い。
もっと飛行機が飛べばいい。もっと空を切り裂いて、割れたガラスのように粉々に飛び散らせればいい。
そして溢れ出した〝よくないもの〟に、全て飲み込まれてしまえ。


END


「快晴」

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