雲ひとつない空に、白い直線が描かれる。
誰もいない川べりに座り見上げていると、校庭のグラウンドに石灰で白線を描いていた小学生の頃を思い出した。あれはラインパウダーと言うらしい。今は石灰ではない別のものを使っていると、何かで読んだ。
あの頃は夢を信じ、頑張ればいつかは報われるという教師の言葉を疑いもなく信じていた。
社会に出て、努力だけではどうにもならない事があることを思い知らされた。
飛行機がもう一機、空を横切る。
真っ青な空が白い線で切り分けられていく。
「·····」
小さく切り分けられた空は、そのまま剥がれ落ちてしまうのではないかと変な想像をしてしまう。
剥がれ落ち、めくれた空の向こうには真っ黒な夜が口を開けていて、いつかそこから〝よくないもの〟が溢れ出してくる気がする。
誰もいない川べりで立ち上がる。
ゆっくりと川面に近づいていく。
空を見ながら、一歩ずつ。
小さく切り裂かれた空は、幼かった頃の私だ。
夢も、努力も、塗り潰された私には、この青が眩しくて目に痛い。
もっと飛行機が飛べばいい。もっと空を切り裂いて、割れたガラスのように粉々に飛び散らせればいい。
そして溢れ出した〝よくないもの〟に、全て飲み込まれてしまえ。
END
「快晴」
4/13/2024, 11:41:17 PM