夢は願望の表れだとか、夢は深層心理を見せるとか、まぁ色々言われているね。
じゃあ、夢で自在に動ける私は、どんな願望を抱いているのだろう? 私は深層心理で何を考えているのかな? 夢を介して君にこうして会いに来ている私は、何を考えているのだろう?
むせかえる花の香り。
昼でも夜でもない時間。
君を招いて、こうして会って、また現実に送り返す。
私はいったい、何がしたいんだろうね?
おかしいだろう?
他人のことはよぉく分かるのに、自分のことはてんで分からないんだ。ただ、ね。
君の感情の一欠片·····それを垣間見るたびに、ココがちょっと、軋んだみたいな音がするんだ。
ねえ。夢が醒める前に、君と確かにここでこうして会ったんだと、私だけがわかる印を刻みつけてもいいかい?
END
「夢が醒める前に」
夢にまで見た瞬間。
ついに願いが叶うと、確信めいた気持ちが膨らむ。
いつもより鼓動が早い。頭の奥が熱くなる。
恋にも似たこの感覚。
この瞬間、私の中途半端に長い人生は正にこの瞬間の為にあった。
耐えて、泣いて、呻いて、耐えて耐えて耐えて耐えて、いつか来るこの日の為に学んで、唇を噛んで練習して、何度も何度も繰り返した。
ようやく、ようやく願いが叶う。
絶対に離さないように何重にもテープを巻いて。
絶対に邪魔されないようにあらゆる場所に鍵をかけて。
さぁ、いよいよ。
あとは寝ている彼にめがけて、思いっきり両手を振り上げるだけ。
END
「胸が高鳴る」
人間の存在そのもの。
なんてね。
END
なかなか難しいテーマ。
「不条理」
あの子はきっと。
彼はそう言って笑いました。
私とあの子は血の繋がりがあるわけでは無いし、あの子は特殊な出生と環境で生きてきたから無意識に父親を求めていただけなんだよ。
あの子は強くなった。
きっともう、私に父親を求めなくても生きていける。
私もあの子と笑って別れることが出来るだろう。あぁ、でも、「清々した」なんて言われたら、少し傷付いてしまうかな。
「あの子は泣かない、か。そういう貴方が泣いているように見えたのは、私の見間違いだったのだろうか?」
END
「泣かないよ」
犬に吠えられること。
怒鳴り声。
理不尽な暴力。
先が見えない暗闇。
出口が分からない地下街。
目に見えないウイルス。
通じない言葉。
理解出来ない言動。
怖がり、と言うより嫌がり、なのかもしれない。
END
「怖がり」