せつか

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11/26/2023, 4:11:03 PM

これくらいが一番嫌だ。
仕事を休むほどじゃなく、薬で何とかなりそうだから結果無理をして、その日一日しんどいまま過ごさなきゃいけないから。

そして卑屈な私は、割とすぐ仕事を休む同僚に「ずるくない?」と鬱屈した妬みを募らせる。
そんな事ばかり考えてしまう無限ループ。

あーあ、我ながらめんどくさい性格!





11/25/2023, 3:05:16 PM

その日初めて、城の外に出ることを許された。
と言ってもあまり遠くへ行ってはいけない、特に“上”は駄目だと厳命された。
けれど私はきっと、浮かれていたのだと思う。城の周囲を駆け回って、魚達とお喋りして、遊び疲れて息をついて、ふと上を見てしまったのだ。

「――」
それは初めて見る光景だった。
ゆらゆら揺れる丸く切り取られた窓に、金色の光が広がっている。私はひと目で心を奪われてしまって、しばらくそこから動けなかった。
金色の光をじっと見ていると、他の色も次々に目に飛び込んできた。
一際強く輝く青い光、そこに寄り添う少し沈んだ白い輝き。赤く鋭い光に、銀の帯。薄緑の淡い輝きに、昏く鈍い鉄の光……。
初めて見る色の氾濫に呆然としていると、不意に腕を強く引かれた。

「上は駄目だと言ったでしょう」
今まで見た事無いほど、それは厳しい顔だった。
「ごめんなさい。でも、とても綺麗で……あれは、あれが、地上なんですか?」
私の問いには答えず、彼女は私の手を取ると城へ戻るよう促した。
「もう少ししたら貴方はあちらに行くことになるから」
「あちら?」
「まだ少し早いわ。その時までもう少し待ちなさい」
「はい」
私は頷いて、彼女と共に歩き出す。
彼女の言葉はいつだって間違っていたことなど無いのだから。でも、それでも……。
城の扉をくぐる寸前、私はもう一度だけ振り向いて上を見た。
「――」
丸く切り取られた窓から金色の、優しく強い光が降り注いでいる。

それが太陽の光だと知ったのは、ずっと後のことだった。

END

11/25/2023, 12:37:20 AM

「とろみって何だよあんかけじゃねえんだからよ、って思ってたけど」
私の腹を撫でながら彼が笑う。
柔らかくしなやかな手触りを堪能するように、大きな手は何度も白い生地の上を行き来する。
「くすぐったいよ」
微かに身を捩ると、もう片方の腕が伸びてきて私を捉えた。
「気持ちいいよな、確かに」
「自分で着ればいいのに」
「うーん、なんか痒くなるからそれはやだ。それに口実だから」
「口実?」
「こうやっていちゃつくための」
腹と背中を撫でていた手が、いつのまにか頬に来ていた。ちゅ、と軽く唇が触れて。
私と彼は笑いながら、ソファに沈んだ。

END

11/23/2023, 4:49:30 PM

あなたは私を「落としてみたい」と言う。
好きにすればいい、と思う。

そんな事を言える時点で、あなたは私のことをこれっぽっちも分かってはいないのだ。
それはただの自意識過剰。
自分なら私を意のままに出来るという、ただの思い上がりだというのに、頭脳明晰なはずのあなたがそれを分かっていない。

「落としてみたい」? 馬鹿なことを言う。

私はもう、落ちるところまで落ちきった、ただの残骸だというのに。これ以上無いというほど堕ちて、僅かに残った残骸で未練がましく落ちる前の自分に縋っているだけなのに。

落ちていく時は夢の城も、綺麗な花も、描いた理想も、みんなみんな引き摺り落として汚してしまう。後に残るのは破れてちぎれて粉々になった、想いの欠片だけ。「堕ちる」というのはそういうこと。
そしてそれは……、蜘蛛の糸とて例外じゃない。

「落としてみたい」?馬鹿なことを言う。
緻密に張り巡らされた蜘蛛の糸ごと、引き摺り落とされる覚悟があるならやってみればいい。

どうせみんな、落ちていく。

END

11/22/2023, 10:00:56 PM

「いい夫婦」の“いい“って、何が“いい“んだろう?

機嫌がいい、仲がいい、頭がいい、羽振りがいい、気前がいい、運動神経がいい、声がいい……。
まぁ「いい」という言葉にあまり悪い印象は無いけれど。

誰にとっての“いい“なんだろう?

それがお互いにとって、とか子供にとって、とかならいいけど、〇〇にとって「都合のいい」、〇〇という目に見えないものを守るための装置としての夫婦なら、そんなものも、言葉も無くなっしまえ、と思う。

あ、今わたしが言った「いい」も、誰かにとって都合のいい「いい」だった。

『夫婦』

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