ジャングルジム
複雑に絡み合う金属の棒の隙間を、身をよじったり、すり抜けたりして、登っていく。
少し汗ばみつつも、ついに頂上に立った時、登る前に見た高さに自分が至ったことに気づく。
下を見下ろせば、遊んでいる子供達も普段より小さく見えて、いつもの景色が遠くまで見渡せる。
今自分が一番空に近い、と思えた瞬間だった。
とある日のジャングルジムで遊んだ子供の話。
声が聞こえる
ー・・・
どこからか声が聞こえる。何を言っているのかわからないけど、確かに聞こえる。
雨のせいでかき消されそうな音の中、さっきと同じ声を探す。気づけば、狭い路地裏にまでやってきていた。
聞こえた声なんて無視してしまえばいい。
誰も自分を責めたりしないだろうし、そもそも関係ないとつっぱねるだろう。
でも、私にはできない。そんなこと。
「キュー・・・」
力を振り絞って声を上げる。大声ではなく、聞こえるかさえあやしいものだった。
「ーこんなところに、子犬がいる?!」
それが私とあなたの出会いだった。
前回のあなたがいたからの続編です。(みけねこ)
秋恋
「寒くないですか?」
紅葉を見に来て、その美しさに見惚れていた私に彼が声をかける。
「ほっぺがモミジみたいに真っ赤になってます。風も冷たくなってきてますからね」
そう言うと自分の首に巻いていたマフラーを外しだし、
くるりと私の首に巻きつけた。
マフラーから伝わる、さっきまでの彼の体温。あったかいと感じるとともに、顔に熱が集まってくるのがわかる。
「そろそろ帰りましょうか。あと、あったかい飲み物でも買ってきます」
何も返せず、寒さで赤くなった訳じゃない頬を隠すように、彼のマフラーに顔を埋めた。
とある日の紅葉を見に来た彼と私の話。
大事にしたい
ー具合悪くない?大丈夫?
自分の体も大事にしないとだめだよ。
こんな僕のことを気遣ってくれる君を 大事にしたい。
時間よ止まれ
ーぎゅう・・・
「・・・!?」
夕方6時のサイレンが遠くから聞こえる、夕焼けの公園。
そろそろ帰らないと、と思って、さよならを告げようとしたとき。
ー君が僕の背中に抱きついて、顔を埋めてきた。
突然のことに声が出ない。というか、なんて声をかければいいのかわからない。
困惑している僕を放っておいて、君が小さな声で何かを呟いた。なんて言ったのかよく聞こうと耳をすませる。
「・・・時間よ止まれ」
肩越しに見える君の耳は、夕焼けのように赤い。きっと夕焼けに染まっただけじゃないだろう。
・・・そして僕の顔も君と同じくらい赤いんだろう。
結局、夕焼けが完全に沈んで暗くなるまで一緒にいた。
前回の時を告げるの続編です。(みけねこ)