繊細な花
「君を温室の中で育てる花のように、僕の愛で包み込んで守るから・・・僕と結婚してくれないか?」
真冬に本来なら咲いていないはずの、真っ赤なバラの花束を持ってプロポーズした彼。
雪景色に映える赤い花を私は・・・
ーバサッ
雪の中に放り投げた。
ポカンとする彼に、ごめんと謝って、
「私は温室で育つような繊細な花じゃないの。野生で生きる強い野花が好き。誰かに守ってもらうような弱い花にはなりたくない」
と告げる。彼の静止も聞かず、背を向けて歩き出す。
いつか私の隣に立つ人は、きっと私よりも強い人。
ーそのくせ、道端に咲く野花が好きな人。
そんな人に出会いたい。
1年後
あなたの笑った顔が好きだよ。
あなたの話を聞くのが楽しみだよ。
「来年も、あなたの隣にいたいなぁ〜」
ふいに口に出した独り言に、返事がくる。
「何変な事言ってんだ?来年だけじゃなくて、その先ずっと一緒にいるんだろ?」
まさかそんな返事が返ってくるとは思わなくて、あなたの顔をまじまじと見つめる。
ずっと見つめられ続けて照れてきたのか、あなたは顔を赤らめて目を逸らす。
「・・・ありがとう」
私の顔もあなたと同じくらい赤くなっているんだろうなと思いながら、あなたに感謝を伝えた。
これからもずっと一緒だよ。
子供の頃は
子供の頃は早く大人になりたかった。
周りの大人が鬱陶しくて反抗ばかりしていた。
でも、大人になった今、子供の頃に戻りたいと思う。
いつからこう思うようになったかはわからないけど、人間ってほんと自分勝手な事ばかり考えてんだな。
そんな事を君に言ったら、
「何難しいこと考えてるの。あなたが気づいていないだけで、案外人間って子供っぽいの」
そうかもしれないと、二人して子供のように笑い合った。
日常
ー疲れた〜・・・
いつもより遅い帰宅時間、疲れきって重たい体。
ーもう何もしたくない・・・。
夕飯なんて食べず、さっさとベッドに入って眠りたい。
ーガチャ・・・
バタバタと駆けてくる足音。漂ってくる夕飯の匂い。
「おかえりなさい。今日は遅かったね。ご飯できてるよ!あっお風呂が先の方がいい?」
君がいて、こんな会話ができる、この日常が愛おしい。
「ただいま」
さっきまでの疲れも吹き飛んで、君のいるこの日常に、ただいまを伝える。
好きな色
昔の僕の部屋はこんなにたくさんの色であふれてはいなかった。必要最低限の日用品と家電、家に帰って寝るだけの生活をしていた。掃除もあまりしなかったから、今よりもっと暗くて、汚れていた。
それがいつのまにか、君色にあふれている。
日用品はカラフルに、家電の色は統一してキリッとさせる。君がこまめに掃除するから、部屋は明るく、汚れ一つない。そして、君の好きな小物が置かれた。生活に必要がないものだけど、君が少し物を置いて、飾った方が良いと言って、小さい写真立てを買ってきた。
「今度、一緒に買い物に行って、あなたの好きな色の物を買おうよ!だってあなたの部屋なんだから、あなたらしい部屋にしよう」
ーあぁ、この部屋は君色にも、僕色にも色づいていく。