みけねこ

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6/20/2023, 11:31:49 AM

あなたがいたから
僕の記憶にある一番始めの出来事は、暗くて変な匂いがして、体が濡れていて寒かったこと。ひとりぼっちだったこと。怖かったこと。
あとから気づいたけど、僕がいたところは路地裏でその日は雨が降っていたらしい。
まだまだ小さかった僕は、体が冷えてもうすぐ死ぬところだった。
「キュー・・・」
力を振り絞って声を上げる。大声ではなく、聞こえるかさえあやしいものだった。
「ーこんなところに、子犬がいる?!」
ーだけど、あなたが気づいてくれた。
その後、家に連れて帰って、体を拭いて、ご飯をくれて、あっためてくれて、僕のためになんだってしてくれた。

今、ここに僕が生きていられるのは、全部あなたがいたから。あなたに感謝して、家族になれて良かったと思う。

6/19/2023, 10:28:09 AM

相合傘
この季節の天気は予測不可能。
今日は念の為と持ってきた傘を使うことになりそうだなと、パラパラ降る小雨を見て思った。
傘を開こうとしていると、君が慌てた様子で、傘を差してやって来た。
「わざわざ迎えに来なくても、今日は傘を持ってきているよ」
「だってあなたったら、この前のオンボロ傘を持っていったでしょ!捨てようと思って探したら無いんだもの」
言われて驚き、傘を開いてみる。見覚えのある穴があちこちにあいていた。
「あー・・・ごめん。ありがとう。で、代わりの傘は?」
「えっ?!」
今気づいたが、君は傘を1本しか持っていなかった。
ーーーぷっ
二人して吹き出し、笑い声が響く。
「慌てすぎだよ」
「だって・・・これはあなたも悪いもん!」
そんな事を言い合いながら、相合傘で歩き始める。
ーこの季節恒例の行事になりそうだなと、思った。

前回のあいまいな空の続編です。(みけねこ)

6/18/2023, 12:32:48 PM

落下
ーゴォォォー ビョゥゥゥー
耳元で風が唸るように吹いている。
ーいや、違う。鳴っているのだ。
ゆっくりと目を開ける。いつのまにか怖くて、閉じてしまったらしい。
「!!」
目に飛び込んできたのは、たくさんの四角いもの、街だ。
ー私なんだって空にいるの!?
地上からの高さがわからないが、とにかく高いことは確かだろう。いくら猫でも、この高さからの着地は難しい。
ーあぁ、そうだ。思い出した。
ご飯を食べて、うとうとしていたら、突然何かに捕まって、空へと連れ去られたのだ。きっとカラスの仕業だ。
その後は、激しく振り回されてよくわからない。カラス同士のいざこざだと思う。
ーそして、途中で落とされた・・・。
落下しているのに、頭の中は冷静で、今までのことを整理した。とにかく今はこの状況を何とかしなくては。
小さな体を懸命にひねり、落下する場所を少しでも変える。固いコンクリートより枝が茂った木の方が幾分かマシだ。緑の多い公園の大きな木に狙いをつける。
ーガサガサッ バキバキッ・・・ドスン
勢いそのままに、私は木に突っ込んでいった。
「うわぁっ空から猫が降ってきた!?」
間抜けな声があがったのはその直後、木の下で休んでいた男の上に私が落ちたからだ。
「こんなことってあるんだな〜。あっお前あちこち傷だらけじゃないか!大丈夫か?」
呑気なことを言いながら、男は私を持ち上げた。
「こりゃちょっと心配だな。よし怪我が治るまで面倒を見てやるか」
そのまま男は私を抱えて歩き出した。

男が空から降ってきた猫をそのまま飼う事になるのはもう少し先の話。

6/17/2023, 11:30:14 AM

未来
「こんな人生、もう嫌!生きていたくない・・・」
いつもより疲れて帰ってきた君は、暗い顔をしてそう言った。その目からはきれいなしずくが垂れてきた。
ー今日、君に何があったのかわからないけど、人生なるようにしかならないよ。
そう励ましたかったけど、僕の声は君には届かない。
「ニャーウ、ニャーオ」
僕の声に気づき、君は顔をあげる。
「ふふっ、励ましてくれるの?ありがとう」
驚いた!通じたのか!?
ーまぁそんな事どうでもいい。君がまた笑えるようになったなら。
未来の事なんてわからないけど、良い事もあるし嫌な事もある。人生と猫生と同じだ。
ーだけど、明日の君の未来に良い事がありますように。
君越しに見えた窓の外の流れ星に、願う。

6/16/2023, 10:18:59 AM

1年前
1年前は、自分の今できる事を考えて、今を生きるのが精一杯だった。明日なんて来なければいいとさえ思っていた。来年の事なんて考えられず、同じような1年を送るんだとぼんやりと思っていた。

今はもう、違う。 あなたに出会ったから。

あなたの事を考えて、自分があなたにできる事を考える。あなたに会いたくて、早く明日が来ればいいと思う。
来年もまたあなたの隣にいたいと願う。もっと良い1年にしたいと思う。

ーこんな風に変われたのは、あなたのおかげ。

今を生きるのが精一杯なのは変わらないけど、あなたと一緒なら、この命ある限り生きていたい。

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