みけねこ

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落下
ーゴォォォー ビョゥゥゥー
耳元で風が唸るように吹いている。
ーいや、違う。鳴っているのだ。
ゆっくりと目を開ける。いつのまにか怖くて、閉じてしまったらしい。
「!!」
目に飛び込んできたのは、たくさんの四角いもの、街だ。
ー私なんだって空にいるの!?
地上からの高さがわからないが、とにかく高いことは確かだろう。いくら猫でも、この高さからの着地は難しい。
ーあぁ、そうだ。思い出した。
ご飯を食べて、うとうとしていたら、突然何かに捕まって、空へと連れ去られたのだ。きっとカラスの仕業だ。
その後は、激しく振り回されてよくわからない。カラス同士のいざこざだと思う。
ーそして、途中で落とされた・・・。
落下しているのに、頭の中は冷静で、今までのことを整理した。とにかく今はこの状況を何とかしなくては。
小さな体を懸命にひねり、落下する場所を少しでも変える。固いコンクリートより枝が茂った木の方が幾分かマシだ。緑の多い公園の大きな木に狙いをつける。
ーガサガサッ バキバキッ・・・ドスン
勢いそのままに、私は木に突っ込んでいった。
「うわぁっ空から猫が降ってきた!?」
間抜けな声があがったのはその直後、木の下で休んでいた男の上に私が落ちたからだ。
「こんなことってあるんだな〜。あっお前あちこち傷だらけじゃないか!大丈夫か?」
呑気なことを言いながら、男は私を持ち上げた。
「こりゃちょっと心配だな。よし怪我が治るまで面倒を見てやるか」
そのまま男は私を抱えて歩き出した。

男が空から降ってきた猫をそのまま飼う事になるのはもう少し先の話。

6/18/2023, 12:32:48 PM