好きな本
小さな頃から本に囲まれて過ごしてきたからだろうか。
私は当然のように、本好きになり、部屋にはたくさんの本が本棚からダンボール箱に至るまで詰まっている。
あなたの好きな本は?と聞かれるとありすぎてどれが一番か選べないくらい。
こんな自分に困っちゃうんだけど・・・たぶんこれからも、私の部屋に本は増えていくだろう。
私が好きって思った本にたくさん囲まれて過ごしたい。
ーそれから、私が好きだと思った本を君にも読んでほしい。君の感想が気になるし、私の事を知ってほしいから。
ーいつか、君が好きな本も教えて。
あいまいな空
この季節の天気は予測不可能。
大丈夫だと思って傘は持っていかなかったのに、帰る直前になって降ってきた。
ーまぁ、小雨だし濡れてもいいかなぁ・・・。
なんて考えていたら、君が慌てた様子で、傘を差して迎えに来た。
「ちょっと歩くだけなんだから、わざわざ迎えに来なくてもいいのに」
「だって、濡れちゃうでしょ」
ほら、と渡された傘を開けば、見事なほどにオンボロであちこち穴があいていた。
ーーーぷっ
二人して吹き出し、笑い声が響く。
「慌てすぎだよ」
「だって、突然降ってきて、テキトーに傘選んできちゃったんだもん!」
そんな事を言い合いながら、相合傘で歩き始める。
ー少し、この季節を好きになった。
あじさい
ーねぇ、知ってた?
紫陽花って土の性質で色が変わるんだ。
酸性だと青、アルカリ性だとピンク、その真ん中だと紫。
僕の家の近所に、この季節になると紫陽花が咲く場所があるんだ。・・・今度、見に行こうか?
今は、忙しくて無理? 大丈夫だよ。
ーちょっと話は変わるけど、紫陽花の花言葉って知ってる?
いろいろあるんだけど、「辛抱強さ」ってあってさ。
意外だけど、紫陽花の花期がとても長いことが由来なんだって。だからまだ大丈夫。
・・・今は無理でも、いつか一緒に見に行けるといいね。
好き嫌い
あなたの笑ってえくぼができる顔が好き。
あなたの怒って怖くなった顔は嫌い。
あなたの入れたコーヒーが好き。
あなたが失敗した目玉焼きは苦手。
あなたが私のためを思ってしてくれた事が好き。
あなたが自分の事を大事にしていない事が嫌。
ー他にもたくさん好き嫌いはあるけれど、
全部含めて、あなたが好き。
街
日の差さない路地裏から、大通りに飛び出した。
ーそろそろかしら?
いつものように、決まった道順をトテトテ歩く。
さっき通った路地裏も、水が噴き出す噴火も、花壇に咲いた花も、日向ぼっこする原っぱも、
ーみんなみんな、私の大好きなもの。・・・それから、
「また来たのかい。黒猫のおちびさん」
大通りに面したカフェで、この時間この人はコーヒーを飲んでいる。
「ちょうどよかった。コーヒーのミルク飲んでいきな」
「ニャーン」
いつも私はこの人から甘いミルクをもらう。
ーーーこの人が好き。
私はあなたがいるこの街が好きだ。