ひとひら
春の生暖かい風に吹かれ満開の桜が散っていく。
「おめでとう」と辺りを埋め尽くす声を後ろ背に、目的の場所まで歩みを進めた。
正門の並木通りの立派な桜の木よりも些かまだ小さい桜の木の木陰で佇む人に声をかけ、どきどきと高鳴る心臓を落ち着かせるように深呼吸して、その人が振り返るのを待つ。
振り向いたその双眸に、ずっと憧れていたその人と同じ制服に身を包んだ私を喜んで映してくれるだろうかと不安になる。
静かに細めらた瞳にじっと見つめられなんだか恥ずかしい気持ちにもなってきて、居た堪れなくなった。
何か言えっと怒鳴りそうになった私に向かってその人は優しく微笑んだ。
私の大好きな顔で「おめでとう」って言うと、桜の花びらがひとひら舞った。
その春のひとときが、ずっと私の心の中に居座り続けている情景だ。
夢へ!
久しぶりに書きたいなと思って帰ってきたら、お題が難しくて早速つまづいた。
「夢へ!」ってなんなんだ。
「夢へ」や「夢へ…」なら何か浮かんだかもしれないけど、この「夢へ!」ってピンポイントで浮かばない。
感嘆符が付いているとなんだか感情がのっているなと思う。
だから前向きな「夢へ」を書かないといけない気がして思い浮かばない。
「夢へ!」って夢に向かって走りだしている青春真っ只中な少年少女を連想してしまう。
夢に希望を抱く純粋な眼差しを煌めかせ、大きな壁だって壊して進むアクティブな10代って素敵だなと再確認した。
別に10代じゃなくても「夢へ!」進んでいる大人も素敵だと思う。
私も「夢へ!」って感嘆符つけて突き進めるように生きていこう。
魔法
お腹を抱えて馬鹿笑いして、好きだよって抱きしめてくれた
大きな体に包まれて、中も外も暖かくなる
空を飛んだり、かぼちゃの馬車を出してくれる魔法もいいけど、彼が私にだけくれる魔法のひととき
彼だけしか知らない特別な呪文で今日も包まれる
君と見た虹
雨が降ってじとじとした、そんな昼下がりだった。
唐突に「出かけよう」と手を握られ、半ば強引に外へと連れ出された。
霧雨が降る中をあまり役に立たない傘を差してふたりで歩く。
「目的地は?」と聞くとにやりと笑って大きな声で「ない!」って言われた時には呆れて苦笑いを溢した。
せっかくの休日を彼女の振り回されている。
もう少しのんびりとテレビを観たかったなとか、読書をしたかったとか、やりたかったことが浮かんでは消えていく。
破天荒な彼女には慣れているのだけど、今ひとつ理解できないことも多々あるのだが、見ていて飽きないし、そこが彼女の魅力だとも思っている。
簡単に言えば自分でも呆れるくらい彼女に骨抜きになっているみたいだ。
「あっ!」っと何か見つけたような声に反応して彼女が指を差している方角を見たら、七色のアーチが空にかかっていた。
傘を畳んで彼女は嬉しそうに両手いっぱいに空を捕まえるように手を虹に伸ばした。
「いいことあったね!」なんて、俺に向かって笑いかける。
きっとこれからも忘れないだろう。君と見た虹を。
夜空を駆ける
難しいお題だから何も浮かばなかった。
歌の歌詞とかに出てきそうなフレーズだなっと思いました。
そもそも夜空を駆けるとはどういうことをいうのだろう。
想像力が乏しい人間には全くわからない。困ったものだ。
紺碧の空に広がる星々の合間を走れたら気持ち良さそうだとは思う。
星座の地図を片手に夜空を駆けるのもいいですね。なんてね。