君と見た虹
雨が降ってじとじとした、そんな昼下がりだった。
唐突に「出かけよう」と手を握られ、半ば強引に外へと連れ出された。
霧雨が降る中をあまり役に立たない傘を差してふたりで歩く。
「目的地は?」と聞くとにやりと笑って大きな声で「ない!」って言われた時には呆れて苦笑いを溢した。
せっかくの休日を彼女の振り回されている。
もう少しのんびりとテレビを観たかったなとか、読書をしたかったとか、やりたかったことが浮かんでは消えていく。
破天荒な彼女には慣れているのだけど、今ひとつ理解できないことも多々あるのだが、見ていて飽きないし、そこが彼女の魅力だとも思っている。
簡単に言えば自分でも呆れるくらい彼女に骨抜きになっているみたいだ。
「あっ!」っと何か見つけたような声に反応して彼女が指を差している方角を見たら、七色のアーチが空にかかっていた。
傘を畳んで彼女は嬉しそうに両手いっぱいに空を捕まえるように手を虹に伸ばした。
「いいことあったね!」なんて、俺に向かって笑いかける。
きっとこれからも忘れないだろう。君と見た虹を。
2/22/2025, 11:08:59 PM