部屋の片隅で、私は一人うずくまっていた。
外では風がびゅうびゅうと唸り声を上げ、
吹雪が壁を叩きつけている。
突如、小屋の扉が音を立てて開いた。
風と雪に押し流されるように
中へ入ってきたのは、色とりどりの
ジャケットを着た四人組の旅人。
身を切るような寒さに凍える彼らは、
しばらく無言で小屋の中を見回した。
「めぼしいものは何もないでやんす」
落胆の声を漏らす黄色ジャケット。
「ここで一夜を過ごすしかないじょ」
唇を震わせながら呟く緑色ジャケット。
「こんなとこで寝たら死んじまうにゃ」
歯をカチカチと鳴らしながら吐き捨てる
青色ジャケット。
「こうするのはどうだろう」
とある提案をする赤色ジャケット。
赤色ジャケットをA。青色ジャケットをB。
黄色をC。緑色をDとしよう。
部屋の四隅にA、B、C、Dが
それぞれ座る。
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│B A │
│ サムイ │
│ 小屋 │
│サムィ │
│C D │
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A B
㌧㌧(。´・ω・)ノ゙(´-﹃-`)ムニャ…
まずAが壁を伝って、
Bの元へ行き、Bの肩を叩く。
A B C
( ˘ω˘ ) スヤァ…=͟͟͞͞ ( ˙꒳˙) (´-﹃-`)Zz…
それを合図にBは立ち上がり、壁を伝い、
Cの元へ行く。AはBがいた場所に座る。
B C
㌧㌧(。´・ω・)ノ゙(´-﹃-`)ムニャ…
Cの元に行ったBは、Cの肩を叩く。
B C D
( ˘ω˘ ) スヤァ…=͟͟͞͞ ( ˙꒳˙) (´-﹃-`)Zz…
それを合図にCは立ち上がり、壁を伝い、
Dの元へ行く。BはCがいた場所に座る。
以下ループ
これを繰り返すことで、睡魔に打ち勝ち、
朝まで耐えようという考えだ。
早速、四人は作戦を決行した。
しかし、私はあることに気がついた。
Aが最初に座っていた場所には、
誰もいない。
つまりDが肩を叩く相手、
Aを起こしにいく者がいないのだ。
困ったな…。
よし。ならば、私がその役割を担おう。
こうして私はAがいた場所に座り、
順番が回ってくるのを待った。
D「㌧㌧(。´・ω・)ノ゙」
私「おけ」
私は立ち上がり、眠るAの元へ向かい、
その肩を叩いた。
――
翌朝、嵐はすっかり治まり、宝石のように輝く陽光が、白い大地を照らした。
四人は顔を見合わせ、
喜びを分かち合っていた。
「やったでやんす!」
「これで帰れるじょ」
互いを讃え合った後、彼らは山小屋を後にし、
一人取り残された私は清々しい気持ちに浸っていた。
いいことしたな────
そしてまた、いつものように
私は部屋の片隅に腰を下ろした。
お題「部屋の片隅で」
とあるバイトの面接に合格し、
新しい職場で働き始めたL。
バイト先では黒いローブに身を包んだ骸骨の先輩が、
懇切丁寧に仕事内容を教えてくれた。
案内された場所は地の底へと続く洞窟。
さまざまな長さのキャンドルが燃えており、炎の
揺らめきが洞窟内を照らす光景は息を呑むほどだ。
「消えゆくキャンドルを持つ者の命を刈り取る。
それが我らの使命じゃ」
次に向かった先は病院。
そこでは、生命維持装置に繋がれた老人と、
老人の家族が寄り添い、最後の別れを惜しんでいた。
先輩が老人の足元に立つと、
老人は眠るように静かに息を引き取った。
Lも先輩を倣い、人生の終わりを迎える者に
立ち会うことが日課となった。
生まれたばかりの赤子、公園で遊ぶ子ども、
ビルの屋上に佇む若者──。
ある日、Lはとある一軒家を訪れた。
そこでは、夫婦が弱った犬に優しく声をかけながら、愛犬の毛並みをそっと撫でていた。
その光景を見た瞬間、Lは人間時代に飼っていた
犬を思い出した。
尻尾を振りながら駆け寄ってきた姿、冷たい身体を
抱きしめたまま泣いた日の記憶。
「犬や猫はどうしてこんなに短い命しか
与えられないのだろうか」
それからLが取った行動は衝動的なものだった。
無期懲役の囚人の長いキャンドルと、
犬の短いキャンドルを密かに取り替えたのだ。
翌日、例の家を再び訪れたLは元気に庭を駆け回る犬と、その姿に喜ぶ夫婦の光景を目にした。
「元気になってよかったねえ」
「まるで奇跡みたいだ」
満足感を覚えながらLが職場に戻ると、
怒りの形相で先輩が待ち構えていた。
「このバカもんが!以前もお前のような我欲のために
掟を破った愚か者がおったわい」
その日、Lはバイトをクビになり、
現在は屍泥処の清掃員として働いている。
時折、キャンドルが無数に並ぶあの神秘的な空間を
思い出しては、Lは淡い懐かしさに浸るのであった。
お題「キャンドル」
手すりに掴まり、電車の揺れに身を任せながら
一人の男がため息をつく。
会社では上司に責められ、家では嫁に冷たくされ、
身も心も限界に達していた。
「やよい駅~ご乗車の際は──」
人がどっと押し寄せ、ぎゅうぎゅう詰めになる。
最寄り駅までの道のりは長い。
ふと、甘い匂いが男の鼻を掠めた。
目の前に立つ女子高生から香るものだ。
そっと太ももを撫でると、
女子高生はわずかに身を震わせる。
期待通りの反応に男はニヤリと口角を上げた。
これが最近のストレス解消法だ。
標的はいつも大人しそうな相手を選ぶ。
おかげで今まで一度も訴えられた事がない。
下手すれば仕事も家庭も失う恐れがあるが、
このスリルがたまらない。
「きさらぎ駅~ご乗車の際は──」
次の駅につくと、女子高生が男の方へと振り返った。
「一緒に降りませんか?」
顔も声も想像以上にかわいい。
断る理由がなかった。
その後、男の姿を見たものは誰もいない。
お題「スリル」
俺には四人の幼なじみがいる
春奈、夏美、秋、冬乃。
みんな俺のことが大好きで、
朝に弱い俺を交代で起こしに来てくれる。
🌸 杉花粉 春奈の場合
「俺さん、おはようございます」
春奈は前髪ぱっつんの美少女で、料理上手な大和なでしこ。春の山菜で天ぷらや和え物を作るのが得意だ。
「早く起きないと、キスしちゃいますよ?」
寝たふりをしていると、
彼女の顔がだんだん近づいてくる。
唇が触れそうになったその瞬間──
「ぶええくしょいっ!」
俺の盛大なくしゃみが春奈の顔面に直撃した。
どうしてだろう、彼女がそばにいると
いつも鼻がムズムズする。
🌻 暑井世 夏美の場合
「さっさと起きろ!セミのぬけがら!」
「ぐふっ」
ツインテールとつり目が特徴的な美少女の夏美は、
毎朝馬乗りになって俺を叩き起こす。
口は悪いし、いつもくっついてくるから暑苦しい。
「おい、夏美。パンツ見えてるぞ」
「はああ?!キッショ!100回熱中症になっとけ!」
❄ 寒稲 冬乃の場合
「俺クン、アサデスヨ」
冬乃は色素の薄い美少女で、
手に触れると氷のように冷たい。
布団から出られず震えている俺に、
冬乃がそっと近づいて耳元で囁く。
「フトン ガ フットンダ」
おやじギャグが放たれた途端、
俺の体は凍りついた。
「ウフフ」
🍁 秋田 秋の場合
「こーら、俺くん。早く起きないと
学校に遅れるぞ、ぷんぷん!」
秋は栗色のサラサラロングヘアが特徴の正統派美少女で、俺にとって理想の幼なじみだ。
しかし、毎年彼女と過ごせる時間は
短くなっていく。
寂しくなって秋の腰に抱きつくと、
彼女は優しく俺の頭を撫でた。
「俺くん、これあげる」
彼女が手渡したのは、一枚の紅葉。
「この紅葉を見て、秋のこと思い出してね」
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「アンタ、いつまで寝てんの!会社遅刻するわよ!」
母親に叩き起こされ俺は目を覚ました。
どうやら今まで見ていたものは
すべて夢だったらしい。
のそのそと起き上がると、
枕元にひとひらの紅葉が落ちていた。
お題「秋 🍁」
私はある悩みを抱えている。
それは、ネットで知り合った
YとLINE交換した事がきっかけだ。
最初の頃は楽しく会話できていた。
だが時が経つにつれ、相手の態度が豹変。
今では一日に何度も乱暴なメッセージを
送りつけてくるようになった。
ピンポン。
通知音が鳴った。
Yからだ。
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╭━━╮
< ねえ┃
╰━━╯
╭━━━━━━━━━╮
< なんで無視すんの? ┃
╰━━━━━━━━━╯
╭━━╮
< おい┃
╰━━╯
╭━━━━━━━━╮
< さっさと返事しろ┃
╰━━━━━━━━╯
╭━━━━━━━━━━━━━━╮
┃ごめん💦 今忙しいからまた後で>
╰━━━━━━━━━━━━━━╯
╭━━╮
< は?┃
╰━━╯
╭━━━━━╮
< ふざけんな┃
╰━━━━━╯
╭━━━━━━━━╮
< てかそいつだれ?┃
╰━━━━━━━━╯
╭━━━━╮
┃そいつ? >
╰━━━━╯
╭━━━━━━━━━━━━━╮
< 今喋ってた男だよク〇ビッチ┃
╰━━━━━━━━━━━━━╯
╭━━━━━━━╮
< 何とか言えよks┃
╰━━━━━━━╯
╭━━━━╮
< こ〇すぞ┃
╰━━━━╯
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こいつやばい。
身の危険を感じた私はYをブロックした後、
相手のアカウントも削除した。
その夜、自宅に帰った私は反省した。
あんなキ〇ガイ野郎とは
金輪際関わらないでおこう。
気持ちを切り替えるように深呼吸して、
ベッドに横たわる。
すると、私の耳に生暖かい息が
吹きかけられた。
「さっさと既読しろよks」
お題「君からのLINE」