耳を澄ますと
赤ちゃんの泣き声が聞こえてくる
おんぎゃーおんぎゃーってね
お母さんいなくなっちゃったから
お兄ちゃんが面倒見てたんだよね
「🫣」
(訳:いないいない)
「🤗」
(訳:ばあ)
ってね
だけど赤ちゃんはそれでも泣き止まなくて
お父さんがキレ散らかして
赤ちゃんを絞め殺しちゃったの
「😢」
お兄ちゃん隣で泣いてたよ
観客を喜ばせられない道化師は失格なんだ
そしたらお父さんがね
「なんだそのシけた面は」
って言ってナイフ🔪を取り出したの
「笑えよ」
そんでお兄ちゃんの口元に傷を入れたの
「ほぉらこれで笑顔になった」
ってね
耳を澄ましてごらん
ほらまだ赤ちゃんが泣いてる
お題「耳を澄ますと」
高級住宅街のとある一軒家に
訪問販売に訪れたA
「この間買った浄水器、
もうすっごく良くて愛用してるわよ」
「ありがとうございます」
この家に暮らす奥様はいつも
ニコニコとしている優しいご婦人だ。
この仕事は行く先々で嫌がられる事も多いのだが、
奥様は親切に迎え入れてくれて、
商品を購入してくれた。
今はこうしてお茶とお菓子までいただいている。
ふと、庭の方に視線を向けると、子どもがいた。
窓ガラス越しにこちらをじっと見つめている。
ボサボサの髪にヨレヨレの服、薄汚れた肌、
おそらく何日も風呂に入っていない。
「あ、あの」
「ん?どうしたの?」
「外に子どもがいます」
「あーあれね、気にしなくていいのよ!」
パンフレットに視線を向けたまま
明るい口調で話す奥様。
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「すみません、御手洗を借りてもいいですか?」
「どうぞー、そこ奥入って右にあるからね」
暗い廊下を進むと先程の子どもが蹲っていた。
「ひっ」
こちらを見上げる真っ黒な瞳。
よく見ると顔や体に細かい傷跡が
たくさんできている。
「きみ、大丈夫…」
手を伸ばそうとすれば、
ガシッ!と何者かに腕を掴まれる。
横目で見やると、奥様が真顔で立っていた。
「優しくしないで」
「え」
「それに優しくしないでね」
そして、奥様はいつものように笑ってみせた。
お題「優しくしないで」
天使と悪魔
あたしの家には天使さんと悪魔さん
が暮らしている。
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~Temperance~
👼「化学調味料は悪魔の食材!特に味の素!
あんなもの食べたら地獄に落ちるわよ!」
天使さんは自然派。
だから外食なんて行った事ない。
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~Gluttony~
悪魔さんの部屋にはコーラやポテチなど
たくさんのお菓子が用意されている。
😈「好きなだけ食べていいよ」
ゴクゴク、パリッ、モグモグ
おいしい。
炭酸もスナック菓子もこんなに
おいしい食べ物なんて知らなかった。
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~Lust~
悲しい事があった日には
😈「どしたん?話聞こか?」
悪魔さんはそっとあたしを
抱きしめてベッドで慰めてくれた。
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~Chastity~
👼「あなたの部屋のゴミ箱にこんな物が入ってたわよ。なんて汚らわしい!」
勝手に部屋入んな。
👼「私のいい子はどこへ行ってしまったの?」
あーもう、うるさいなあ。
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~Wrath~
あたしの赤く汚れた手や服を見て
悪魔さんは笑った。
😈「君は本当に悪い子だ」
お題「善悪」
少年は雨宿りしていた。
ここは田舎のバス停だから
1時間に1本しかバスが来ない。
曇天の空を眺めていると、
いつの間にか隣に少女が座っていた。
艶やかな黒髪と白いセーラー服を着た
きれいな少女だった。
「雨、やみそうにないですね」
「そうですね」
「あの日も」
「はい?」
「あの日もこんな風に雨が降っていました。
ここでバスを待っていると、知らない
おじさんが近付いてきて…あの時はほんとうに
怖かったなあ、痛かったなあ」
いつの間にか少女は水に浸かったようにびしょ濡れ
の姿になり、彼女の足元には水溜まりができていた
彼女と話していると、バスが到着していた。
乗客も運転手もみんな青白い顔で俯いている。
「それじゃあ私、いきますね」
「はい…気をつけて」
彼女が乗ったのを見送ってからすぐに
次のバスがやってきた。
少年は先程まで少女が座っていた場所を見つめた。
そこはシミができたみたいにぐっしょり濡れていた。
お題「ところにより雨」
とある密室にて
白骨化した二つの遺体と一枚のメモが残されていた
だいすきだよ
れんあいじゃなくてもいい
かならずしもね
ただそばにいてほしいだけ
すきなあいてとなら
けっしてはなれない
てつなごうよ
お題「二人ぼっち」