お母さんは優しい人だ。
いつも私以上に私のことを考えてくれる。
「お菓子には添加物が入っていて
体に悪いから食べてはダメ」
「いかがわしい本を読んではだめ。
全部 捨てておいたからね」
「ゲームは頭が悪くなるから買いません。
将来のために勉強しなさい」
「そんな相手と付き合ってはだめ。
この先きっと後悔するよ」
「勉強して、いい学校、いい会社に入って
お母さんを早く安心させてちょうだい」
「みんなあなたのためを思ってのことよ」
お母さん
今までありがとう。
私は今日ようやく
あなたの優しさから解放される。
お題「優しさ」
白い病室
風になびく白いカーテン
窓の外を眺める私
振り返れば笑顔の彼が立っていた
窓から落ちて頭を強く打った私
一命は取り留めたが
すべてを忘れてしまった
私はどうやら天涯孤独なようで
連絡先は彼の他に誰もいなかった
擦り傷切り傷痣火傷
ボロボロな私の体を
優しく抱きしめてくれた彼
窓辺に飾られた白い椿の花がきれい
彼が私に贈ってくれた大切な花
彼に見つめられると
心がざわついて胸がドキドキする
私たちはきっと
深く愛し合っていたのだろう
何も思い出せないけれど
彼がいてくれたら安心
お題「安心と不安」
私はとある変わった食材を扱う
レストランに来ております。
「まずは前菜の"踊り食い"でございます」
お皿の中では小さな??達が泳いでいます。
私は一匹箸で摘み、醤油に漬ければ、
それはキーキーと鳴き声を上げました。
口に入れると中で暴れ回るような不思議な食感で、
歯を立てればぷちゅりと生暖かい液体が
飛び出してきました。
「次は??のポワソン"活けづくり"でございます」
小さなシェフが出てきて、??の体を刃物で裂き、
見事な活けつくりが完成しました。
新鮮な食材ならではのコリコリとした歯応えと、
少し臭みのある野性的な味わいは
何度でも食べたくなる魅力があります。
「次は??のソルベ"えぐり出し"でございます」
私は??の目玉をぎざぎざスプーンでくり抜きました。
ぷるんとした食感と濃厚でクリーミーで味わいは、
舌の上でとろけるようで、
一瞬にして口いっぱいに広がります。
「次はメインディッシュの"ひき肉"でございます」
私は皿に乗せられた??と目が合いました。
そこで目が覚めたのです。
何とも不思議な夢を見ました。
お題「こんな夢を見た」
ここは魔王が支配する世界。
そんな魔物が蔓延る混沌の時代に、
勇者A・勇者B・勇者Cは誕生しました。
"サクシャ"という神様が3人に語りかけます。
『偉大なる勇者達よ。この世界に平和をもたらすため戦うのじゃ!記念に何か1つアイテムを差し上げよう』
勇者Aは敵を倒すための「剣」を願いました。
勇者Bは敵から身を守るための「盾」を求めました。
勇者Cは便利な「タイムマシーン」を欲しました。
こうして3人は各々要求したアイテムを手にして、
冒険の旅へと出ました。
勇者Aと勇者Bが与えられた武器を操り敵と戦う間に
勇者Cはタイムマシーンを使い過去へ飛びました。
そこで彼は魔物たちによる数々の被害を食い止め、
ひいては魔王の誕生まで阻止したのです。
かくして世界に平和が訪れましたとさ。
~完~
神様は頭を抱えました。
『とんだチート能力を与えてしもうた。これではお話にならんぞい!』
勇者Cは神様に存在ごと消されてしまいました。
お題「タイムマシーン」
夜の澄み切った空気が好きだ
街の喧騒から離れた静かな道
お気に入りの曲を聴きながら
帰路につく
突然何者かに後ろから抱きしめられた
そのまま暗闇へと引きずりこまれる
震える身体に覆いかぶさり
何者かが耳元で囁いた
一目見た時からずっと想っていた
好きになってくれなくてもいい
君にとって忘れられない
特別な夜になれば
それから長い年月が経った
大好きだった曲はあの日以降聴けなくなった
私は今でもあの夜が忘れられない
お題「特別な夜」