ただの暇つぶしだった
街で見つけた可愛いおもちゃを
仲間たちと盗んで檻の中に閉じこめた
散々弄んで壊した後は箱に詰めて海へ捨てた
きっと今頃は海の底だ
だけど俺たちがやった悪戯は大人たちにばれて
檻の中へ入れられた
俺たちはまだ子どもだったから暫くすると
外に出してもらえた
それからまた新しいおもちゃを探して街を歩いてると
突然視界が真っ暗になった
気づいたら俺は暗く冷たい場所にいた
罪は鎖となってこの身体を縛り上げ
罰は碇となってこの魂を海の底へと沈めた
人もいない光も届かないこの場所で
死ぬことも出来ずに一生俺は生きていく
お題「海の底」
いつからだろう
そいつが現れるようになったのは
ふと窓の外の景色を眺めているとぼんやりとした
何かが立っておりこちらをじっと見つめていた
食事をしている時 誰かと話している時
買い物をしている時 家に帰る時
いつも視線を感じていた
ピンポーン
午前2時 玄関のチャイムが鳴る
ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン
無視していると何度も何度も
インターフォンを押された
苛立ちながら玄関の扉を開けると
そこには誰もいなかった
鍵を閉めて念の為チェーンもかけておいた
これでようやく眠れる
布団をかぶるとそいつはこちらをじっと見つめていた
お題「君に会いたくて」
部屋を掃除していたら「✝︎禁断の書✝︎」と書かれた
A4ノートを見つけた。
『この封印されし「✝︎禁断の書✝︎」を開く者よ
おめでとう
我らはサタンに選ばれし闇の同胞である
来たる吉日
ワルプルギスの夜に我らは紅き月の下
再開するだろう
若く美しい娘を生贄に
その芳醇で濃厚な血で盃を交わし
我らは破れぬ血の盟約を結ぶ事となる
もし約束を破れば
我がブラッディ・ホーリー・エスパーダ
の餌食となるだろう
それをゆめゆめ忘れることなかれ
闇の同胞よ』
私はこのノートを処分した。
お題「閉ざされた日記」
質問箱に一通のお便りが届いていました。
『耳の中にいる小人を取り除きたいのですが、
どうすればよいですか?』
物心ついた時から
私の両耳には小人が住んでいます。
右耳には勇ちゃんという小人がいて、
『ずっとこのままでいいの?』
と私に問いかけてきます。
左耳には優ちゃんという小人がいて、
『ずっとこのままでいいよ。』
と私に囁きかけてきます。
私は彼らを取り除くために耳鼻科へ行きました。
しかし先生は小人などどこにもいないと言うのです。
それから私は、内科、心療内科、精神科と色々な病院をまわりましたが、結局、誰も彼らを取り除くことはできなかったのです。
私はこの奇妙な同居人たちとずっとこのまま暮らさないといけないのでしょうか?
何かアドバイスをお願いします。
お題「ずっとこのまま」
とあるところに一人の男がいました。
男は生まれた時からひとりぼっちで、
誰も友達にはなってくれませんでした。
男の部屋にあるブラウン管テレビから
こんな歌が流れてきました。
『友達100人目指そう!隣人も友人♪
怖がらないで~歩み寄って〜
さあみんなで手を繋ごう♪』
そうだ、自分から歩み寄らねばいけなかったんだ
それから男は老若男女とわず捕まえてきては
無理やり自分の友達にしました。
男の杜撰な縫合技術により、彼らの手と手を繋ぎ合わせ、ひとつの輪を作り上げていきます。
そして月日は経ち、
男は友達100人作ることに成功したのです。
彼らは仲良く手を繋いで男を取り囲みます。
冷たくなった友達の輪の中で
男は幸せそうにいつまでもいつまでも踊り続けました
おしまい
お題「手を繋いで」