宵街

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8/29/2023, 12:12:32 PM

 あぁ、やっと来たんだね。遅かったじゃん。なに、彼女にでも甘えられてたとか?
 仕事が忙しかっただけ?ふーん。ま、いいよ。お風呂入っておいで、早くしようよ。

 私とあなたは割り切った関係。ここでただ二人シーツを汚すだけの、それだけのための関係。
 最近あなたに彼女ができたと聞いたとき、ひどく胸騒ぎがした。お互い好きにならないって決めてたはずなのに、彼女ができたというあなたの顔はどことなく物憂げで。

 どうせ私の願いは叶わない。だから、言葉はいらない。ただこの時間だけは私の首から下を愛してよ。

 心が擦り切れて痛まないように。

43.『言葉はいらない、ただ…』

8/29/2023, 8:31:13 AM

 「⸺急になんだよ、なんでそんな焦ってるんだ。嫌なものを見た?悪夢かなんかでも見たのか。

 ⸺違う?詳細教えてくれねぇと分かんねぇよ。何を見たんだって。…包丁を持った女?!通報はしたのか?!できなかったってやべーだろ!今すぐしないと!

 ⸺え、俺ん家の方向に向かってた…って偶然だろそれ、怖いこと言うなよ。とりあえず通報しないと、お前は無事ならそれでいいけど…

 (ピンポーン)

 はい…はい。

 ⸺宅配だって、なんか頼んでたっけ…?ちょっと出てくるよ。またかけ直す」

 
 これが、彼の最後の会話なんだけど何か思うことあるかい?

 はい、本当に悲しいです。まさか死んじゃうなんて。

 ……君が包丁を持って、宅配員に扮装して訪問しなければ、喜びのあまり刺すなんてこと、しなかったんじゃないかな。

 だってやっと真正面から顔を見れたんですもの!この瞬間を私だけの宝物にしたかったんです!ネットで知り合ってから相思相愛で、私がいながら他の女に現を抜かすなんて許せなくて、それで!

 そもそも付き合ってすらない、君が彼のストーカーだってことは気づいているかい?

 ストーカー?何言ってるんですか。違いますよ、私達は恋人同士ですから。

 ……はぁ…。埒が明かない。


42.『突然の君の訪問。』

8/27/2023, 8:08:58 AM

 私の日記帳には誰かが住んでいる。オカルトじみているとは思うけど、私が何かを書き込めば、次に開いたときに誰かが書き込んでいるのだ。例えるならば赤ペンしてくれる先生みたいな、日誌に書いた感想に先生がまた感想を書き連ねるみたいな。
 字を見るだけでは女性みたいだけど、年は私よりも下な気がしている。丸っこくて可愛らしい字なのだ。

 「あなたは誰?」と書いてみたことがある。
 そうしたら、【私はあなた】と返ってきた。でも私はこんなふうに書いたりはしない。

 「ドラマでよくある多重人格みたいな?」
 【やっと気づいてくれたね、寂しかったんだよ】
 「いつから?」
 【いつからいるのかってこと?それなら中学あたりから】 

 …私どうしてこうなったんだろう。

41.『私の日記帳』

8/26/2023, 9:08:16 AM

 プラスチックの板を挟んで向かい合わせ。向こう側の君は申し訳なさそうに下を向いたまま。
 時間がないから適当に話そう。本当はこんなこと望んでなかったのにと思いながら。

 君は大きな罪を侵して、壁の向こうへ消えていった。今はこうしてしか話せない。

 君の罪を許せはしないけど、僕は君にとってただ一つの拠り所だから逃げないで向かい合う。
 
 今この時間と同じように。


40.『向かい合わせ』

8/25/2023, 3:20:18 AM

 弱りゆく君に何もできない
 冷えゆく君に何もやれない
 医者でもない、神様でもない僕は
 ただ君を見ていることしかできない

 どうしてもっと早く気づけなかったんだ
 どうしてもっと早く駆けつけられなかったんだ
 頭の中でかけめぐる後悔は消え失せてくれない

 こんなことになるのなら
 あの日君と喧嘩なんてしなければよかった

 こんなにもやるせない気持ちを抱くのは
 一体いつぶりなんだろう

39.『やるせない気持ち』

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