好きの反対は嫌い?
いえいえ、裏返したら無関心
どうして今それを聞くのでしょう
もしかして私が好きなのかしら?
いえいえ、それを言ったら無関心
どうしてそんなに悲しがるのでしょう
だってそうじゃない
貴方のこと、私なんにも知らないの
どんなに私を裏返そうとしても無意味よ
だって貴方は浮気性
38.『裏返し』
久しぶりに開催された夏祭りに、浴衣姿で君は来た。遥々遠くからよくやってきたものだ。小さな地元のお祭りだというのに君は子供のようにはしゃいでいる。きっと今住んでるところの祭りのほうが規模がでかいだろうに。
それでも地元の祭りのほうが大事なの!とポカポカ叩いてくる。
小さな神社で行われ、少しの屋台が肩を並べて佇み、たくさんの人が行き来をしている。
焼きそばやたこ焼きなど、あれやこれやと買い揃え食べていく。
祭りの鳳に花火が上がり、君は嬉しそうに飛び跳ねていた。よく見ていたあの頃の花火は、今となってはこんなもんか、と思うようになってしまうほど。
花火がきれいだったねと君は帰りがけに感想を述べている。その後ろ姿が名残惜しくて。
明日には帰ってしまう君に、さよならを言う前に一つだけ伝えたくて。
でも弱虫な僕だから何も言えない。好きの二文字すら言えないのだ。だから。
せめて過ぎ行く君の背中に、つぶやくことしか、できないんだ。
37.『さよならを言う前に』
今日は楽しいお出かけだっていうのに、空模様はあいにくの雨。どうやら君も曇り顔。うなりながら何か調べものをしている様子。
何を調べているんだろう、僕にも見せてよと聞いても返事は返っては来ないから相当集中してるみたい。
仕方ないからおとなしく待っていよう。クッションを抱きかかえて待っていると、君があっ、と声を上げた。なになに、どうしたのさ。
急いで駆け寄ってみると君は嬉しそうに何やらお出かけの準備を始めた。僕も急かされて玄関へ。
「雨でも遊べるドックランを見つけたよ!さぁ、行こう!」
やった!お出かけができるんだね!
それじゃあ早く行こう!
36.『空模様』
小さい頃の話。鏡の魔法を信じていた。
病弱な私は病室からほぼ出られず、忙しい両親に会えなくて寂しくて毎晩のように泣いていたとき。
鏡の向こうから少年が声をかけてきた。同い年くらいの、おっとりとした少年。
寂しさに耐えかねていた私はすぐにその少年と仲良くなった。いろいろなことを話して、そしてそれを少年がうなずきながら聞いてくれる。
そんなある日のこと。少年が願い事を叶えてあげると言い出した。私は嘘だと思ったが、両親に会いたいと願ってみた。
するとどうだろう、忙しい両親がやってきて私の頭をなでて1日そばにいてくれたのだ。
本当でしょ?と得意げにする少年の事を、私はすっかり魔法使いだと信じた。
それからたくさんのことを願ったのだ。健康な体、愛情、友達、失くした宝物…
そのすべてを彼は叶えてくれた。ただ一つを除いて。
私の願いが叶うたび彼は傷つき、痩せ弱っていく。心配した私に彼は言った。
鏡の向こうはすべて逆の世界。決して交わらない逆さ合わせなのだと。
せめて願いを叶えてよと、貴方と共に生きたいという願いを。
しかし貴方はそれを拒んだ。僕は君からもらったものを返すだけだと。
そして貴方は溶けるように消えていった。本当に魔法が解けるように。
私はそれ以来、あなたが現れるのをずっと待っているのです。
35.『鏡』
23/8/18 ♥300over ありがとうございます
手を繋いで歩いた雨降りの道
抱きしめてもらったときのぬくもり
優しく背中をなでてくれたあの手も
なんでだろうなぁ、忘れられなくて
過去にないほどの大喧嘩をして
もう二度と会わないと、君が言い放ったあの日から
古ぼけて色褪せていくだけのその記憶を
君の優しい歌声を
慈愛を込めた温もりを
その手の柔らかさを
いつまでも捨てられないのは
弱さというのでしょうか
34.『いつまでも捨てられないもの』