宵街

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 久しぶりに開催された夏祭りに、浴衣姿で君は来た。遥々遠くからよくやってきたものだ。小さな地元のお祭りだというのに君は子供のようにはしゃいでいる。きっと今住んでるところの祭りのほうが規模がでかいだろうに。
 それでも地元の祭りのほうが大事なの!とポカポカ叩いてくる。

 小さな神社で行われ、少しの屋台が肩を並べて佇み、たくさんの人が行き来をしている。
 焼きそばやたこ焼きなど、あれやこれやと買い揃え食べていく。
 祭りの鳳に花火が上がり、君は嬉しそうに飛び跳ねていた。よく見ていたあの頃の花火は、今となってはこんなもんか、と思うようになってしまうほど。

 花火がきれいだったねと君は帰りがけに感想を述べている。その後ろ姿が名残惜しくて。

 明日には帰ってしまう君に、さよならを言う前に一つだけ伝えたくて。

 でも弱虫な僕だから何も言えない。好きの二文字すら言えないのだ。だから。
 せめて過ぎ行く君の背中に、つぶやくことしか、できないんだ。


37.『さよならを言う前に』

8/20/2023, 2:00:18 PM