「⸺急になんだよ、なんでそんな焦ってるんだ。嫌なものを見た?悪夢かなんかでも見たのか。
⸺違う?詳細教えてくれねぇと分かんねぇよ。何を見たんだって。…包丁を持った女?!通報はしたのか?!できなかったってやべーだろ!今すぐしないと!
⸺え、俺ん家の方向に向かってた…って偶然だろそれ、怖いこと言うなよ。とりあえず通報しないと、お前は無事ならそれでいいけど…
(ピンポーン)
はい…はい。
⸺宅配だって、なんか頼んでたっけ…?ちょっと出てくるよ。またかけ直す」
これが、彼の最後の会話なんだけど何か思うことあるかい?
はい、本当に悲しいです。まさか死んじゃうなんて。
……君が包丁を持って、宅配員に扮装して訪問しなければ、喜びのあまり刺すなんてこと、しなかったんじゃないかな。
だってやっと真正面から顔を見れたんですもの!この瞬間を私だけの宝物にしたかったんです!ネットで知り合ってから相思相愛で、私がいながら他の女に現を抜かすなんて許せなくて、それで!
そもそも付き合ってすらない、君が彼のストーカーだってことは気づいているかい?
ストーカー?何言ってるんですか。違いますよ、私達は恋人同士ですから。
……はぁ…。埒が明かない。
42.『突然の君の訪問。』
8/29/2023, 8:31:13 AM