あのときに戻れるなら戻りたいか。
なんか神様が降りてきたと思ったらいきなりそれって。どこかのなろう小説ですかって話。力がほしいか、とかそんなのありえるのかって思ってたのに。
でもなんでかな、私は頷いてしまったんだよね。あのときに戻れるならきっと同じ轍は踏まないって決めてさ。
戻ってみればあのときの君がいて、あのときと同じように玄関から出てくる。
そのまま家に上がり込んでいつも通りの時間を過ごしてた。他愛のない話をして、あーだーこーだ文句言って笑いあって。
このときはお互いしか頼れない、信じられないって思ってたのに、未来では最悪の別れ方しちゃうんだね、私達。
最悪の別れ方をしたとしてもまた出会ってくれる?
「当たり前だよ、何を言ってるの」
だって将来そうなる気がして。
「なるわけ無いよ。だってずっとそばにいるって約束じゃん」
そうだね。
何言ってるんだかってまた君は笑う。今の君は信じてやまないんだろうけどさ。
⸺その約束、守れなかったんだよ。君がね。
13. 『神様が舞い降りてきて、こう言った』
⸺
23/7/27 ♥100 over ありがとうございます。
初めはどうでも良かった。
生きたいと思えないような地獄にいたから。
でもあなたに出会ってそれは変わった。
貴方は僕に幸せを願ってくれたから。
そして僕もそれを真似た。
貴方のために幸せを願ってみたかったから。
ある日貴方は旅立った。
自分を貫きたいと貴方は言ったから。
幾らか過ぎて、貴方は愛と夢を連れて戻ってきた。
幸せそうに、微笑んで。
…僕は何も、言えなかった。
僕はいつしか変わってしまった。
嘆いていたって変わらないって分かっていたから。
この命の意味などもう分からなかった。
けれどももう一度幸せを願った。
それが、
12.『誰かのためになるならば』
今日は歌を歌いましょう
貴方が喜んでくれるように
今日は手のひら甘えましょう
優しくなでてもらえるように
今日は羽を休めましょう
貴方が安らかであれるように
今日は優しく眠りましょう
有限の時を忘れぬように
私はここから出られぬ小鳥
閉じ込められて、歌を歌う
私は貴方にかわれた小鳥
鳥かごで眠る、変わらぬ日々を
11.『鳥かご』
あの頃は良かった。何をするにも自由だった。夜の街を遊び回るのも、捨てられていた子猫を保護して一緒に育てたのも、あいつがいたから何でも楽しめたんだ。
あいつの影響で変な漫画にハマったり、信じてなかった占いもなんとなく信じるようになって。
本当に楽しかったんだ。本当に。
なのに今は不自由で、何をするにも失敗、失敗、失敗。上司に怒られ、同僚には笑われ、努力は横取りされて何もかも楽しくない。生きていても意味がない。
あいつは何をしているんだろうか。平和に生きているんだろうか。そんなこと考えていたら何故か涙がこぼれ落ちて。
そして気づいたら、電話をかけていた。でも出るわけもなく。何気なしに書きしめた遺書を机に、首を…なんて思って、足元にあった椅子を蹴った。
その直後。
「なにしてんだよ!!」
あいつが淀んだ部屋に飛び込んで、俺を吊り上げる縄を切り捨てやがった、なんでここにいるんだお前。
そんな事言う前に強く抱きしめられていて。そんなに震えて何なんだ、大丈夫かなんて言い出す前におまえの口から弱々しい音が漏れ出て落ちた。
「間に合って、良かった」
お前、仕事は。
「そんなもん途中で抜け出して来たに決まってんだろ、だって」
だって?
「かけがえない親友の危機に駆けつけられないなんて、一生後悔するだろうから」
ああ、本当にお前は。
お前が親友で、本当に良かった。
10.『友情』
あの日からずっと想い続けてきたんだよ。君は鈍感だから全く気づかなかったでしょう?その鈍感さに泣いてしまったりしたくらいなの。今となっては笑い話。
今日流す涙は嬉し涙。だからそんなに慌てないで。せっかくの晴れ舞台なのよ、しゃきっとしなきゃ。ほらほら背筋伸ばして、扉が開くよ?
これからは貴方と永久に過ごせること、そしてこの想いが花咲いて実ったこと。
これ以上の幸せなんて今は見つからないわ!
白に包まれた二人。祝福の拍手とともに、永久に寄り添い歩いていくことを誓います。
9.『花咲いて』