郡司

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12/8/2024, 2:33:56 AM

部屋の片隅で

部屋の片隅はストーブの定位置だ。寒い季節になるとストーブを使うので、私も隙あらば部屋の片隅でぬくぬくしようとする。冷え性とまではいかないが冷えやすいからだ。

冬の間、ストーブの火が長時間絶えることは無い。灯油切れを起こしたらなるべく早く灯油の調達に走る。子どもが小さかった頃は夜中や明け方でも車に灯油用のポリ缶を積んで、24時間営業のガソリンスタンドへ走った。気密性の高い住居ではないから、火が絶える時間が長くなるのは危険なのだ。

家の中に、熱源となるものは複数ある。ストーブは最も強力なものだが、他にテレビの放熱や冷蔵庫の稼動熱、調理家電やガスコンロを使うときの熱、給湯器や照明器具の弱い放熱、そして人間自体の放熱など。家の中の温度に寄与しているものは結構たくさんあるのだ。

とはいえ、冬はストーブの恩恵が絶大だ。部屋の片隅で、住人の生命維持が容易になるように働いてくれる。ぬくぬく、ほこほこ。

12/6/2024, 3:18:45 PM

逆さま

仕事に就いた。経験のある界隈の職種で非正規雇用なので、割と気軽に始めた。10年ぶりの社会復帰は職探しの段から目新しいものがたくさんあって、なかなかに楽しい気分だが、滑り出してみると怒濤のトラブル続き。現場裏でケンカが始まり第1週からワンオペ。少ない人員の一人が突然ぶっちぎって辞めてしまい、その穴を埋める形でワンオペ。適当仕事で荒れた部分を原状復帰させるためという上の意思決定で個別担当を持つことになり、現状チェックをしてみると「あってはならないモノ」が恐ろしいほど出てきた。いやはや、みんな人間じゃのう…

10年ぶりに見る「宮仕えの場所」というやつなのだが、自分のものの見え方もずいぶん変化している実感がある。私より若い人達が圧倒的に多いなかで、何かと老婆心が湧くが、如何せん私はド新人という立場。ものは言わずに居るが、気分的には映画「マイ・インターン」のロバート・デニーロだ…

トラブルや軋轢を解決する方向性や手法について、私の目には見える着地点への糸口が、若い人達には見えていない。そして、現状にテコ入れしなければ事業として躓くリスクさえある脆弱な点が綻びている部分に、会社の注力が薄い事実を現場サイドで感じていても上層部は吸い上げない。大丈夫か。

……なんて感じの「逆さまな視界」は新鮮ではある。みんながんばれー、などとしみじみほのぼのしてしまう。まあ、疲れはするんだけどね。今のところ、毎日なんだかんだと楽しく仕事に臨めている。

11/27/2024, 7:05:59 PM

愛情

私の住処のすぐ近くに、天才がお店を開いた。シフォンケーキの天才が。感動的なおいしさのシフォンケーキを食べては友人に知らせようかと思う一方、あまり大人気になってしまったら手の届きにくいことになってもイヤだなどと考えてしまうほど、そこのシフォンケーキは美味だ。

これまた近くに、コーヒーとチョコレートを組み合わせる天才もお店を開いている。「これがショコラというものか…!」と毎回思うし、コーヒーの香りとチョコレートの甘さは、幸せ感を確実にもたらしてくれる。とにかく、他ではありつけない素晴らしいショコラなのだ。

少し離れた場所に、全く美味なブルーチーズを作っている牧場がある。私は海外の有名ブランドのブルーチーズはすごく苦手なのだが(冷蔵庫ごと腐敗したのかと疑うほどの臭気)、そこのブルーチーズは白飯のおかずに好適。牧場のお母さんはバニラアイスにトッピングも美味と教えてくれた。臭くなくて美味なブルーチーズを作っちゃうなんて、天才だ。牛たちもすごく元気な牧場である。

何て名前のお店で場所は何処、などとナイショにしておきたい、天才達の拠点である小さなお店。どれもみな、若き主の夢と愛情が咲いている。断言しよう、高価過ぎる有名ブランドのどれも、この天才達が生み出す美味の足もとにも及ばぬと。

美味の理由は愛情なのだ。工場生産品ではムリな美味なのだ。時々、自分を元気にするために、彼らのワザに込められた愛情をいただく。

11/23/2024, 6:41:06 AM

夫婦

夫婦って、何だろう?
いろいろな夫婦がある。
私は昭和生まれだから、昭和の頃に一般的だった夫婦のありようはたくさん見た。家の継続と繁栄が、実情はともあれ重要視されるベーステンプレートだった時代だった。戦前までの「家制度」の感覚が色濃く残っていた空気もあって、現在からすれば「面倒くさいあれこれ」は何処でも見聞きした(しかし日本のフォーマルはそこに根拠があった)。

今という時代の夫婦は何で結びつくのだろう。江戸時代から「子は鎹(かすがい)」という言葉があるらしいが、いまやその限りではないのだなと思うものをよく見聞きし、私自身もバツイチになっている。

私の周りの同級生のうち、今もって夫や妻があるのは一人だけだ(…!)。未婚の同世代も多い。「結婚に踏み切れない」と言う若い世代も多い。聞いてみると、金銭的な問題ではないらしい。どうやら「結婚という状態」に信頼が置けないらしいのだ。これは特に男子諸君に顕著であるように見受けられる。補足しておくが、最近よく喧伝されている“多様性云々”という状況に無い人達である。

では、「結婚という状態への信頼」とは何だろう…?

そも「不信感」は何処から生まれているのか?

不和多き両親と暮らしたのだろうか
どちらかの親が非常に不幸だったのだろうか
周りの人が皆、自分より充ちて見えるのだろうか
ネットに垣間見る残念さの印象が強いのだろうか
単に巡りあわせがまだなのだろうか
出会うものごとへの熱量の問題なのだろうか
傷つけられると恐れているのだろうか
私にも子どもがあるから、このへんは気になる。
人間という生きものへの信頼に関わるところだからだ。

自分らしく自分のまま気分良くあり、心のままの表情を表しあい受け取りあい、一緒にいるための条件を付けず、自分のエゴのために相手を利用することもなく、相手のなか深くにある光を見ている心を愛と呼ぶ。

愛を実践する約束が夫婦であるならば、「何も持たぬ者とはいえ命は持つ」ものに不足するところなど無い。寧ろ互いの命へまっすぐ向かうによろし。豊かは後からついてくる。

11/17/2024, 2:49:41 PM

冬になったら


来い、白魔よ
生きる気概に濁り毒しか撒かない愚者に祝福を

まっしろな氷結の豪風
大気も木々も唸り咆哮する
温い松は弾けて裂ける
野生のものたちも一目散に逃げる

真っ直ぐに生きることへと走らぬものの命を攫う
どんな生き物にも容赦ない
人間なら猶予は2分間
みるみる体温は剥ぎ取られる

生きるをやめたいならここに居ろ
生きるなら疾く去れ
本能が鳴らす恐怖に耐えられるか
自然の圧倒の中の小さく儚い自分を直視できるか
「生きよう」と決意できるか

白魔のなかにくだらぬものの一つも無い
「いま」しか無い

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