ただ僕の夢を見つめてくれるだけで良かったんだ。
誰も他人を理解できない。当然のことだ。だから他人に口出しなんてするべきじゃない。所詮君は君でしかない。
だから別に、僕の夢を壊す必要なんてなかっただろう。
砕け散る宝石のように、段々と大切なものから価値が失われていく。それを眺める屈辱が、後悔が、侘しさが、君にだって分かるだろう。
拾い集めてくれよ。地を這いつくばって一欠片も残さず集めて、繕って、元に戻して返してくれ。
出来ないなら君の夢を砕かせて。
やり直しがないことに対して私は、何もすることが出来ません。
自分の人生がただの道のひとつに過ぎないということに絶望を感じることがあります。どう足掻いても変わらぬ時間と結果に焦りがあるんです。ですがいつだって結果はひとつだから、受け入れてしまうんです。そうするしかないんです。
あいつを殺しても私にはこの道しか無かったと、過去を鵜呑みにしなければならないと、私は殺しにだって意味をつけるんです。
僕。僕ね、死んだはずなのに。
目の前で少年が踊っている。音楽もなしに縛りなんてないようにずっと。宙を舞うように、なんとも言えない踊り。見てるとなんだか悲しくなる。僕に気づいた少年が言う。
「お兄さんも一緒に踊ろう。」
はっとした。その顔を見て息が詰まりそうになった。その少年は僕と同じ顔をしてた。僕は答える。
「そうだね。踊ろう。」
それでも答えてしまった。僕は僕に歩み寄る。そしてゆっくり押し倒す。鮮やかに首を絞める。少年はもがこうとせず踊っているような表情。よかった。さよなら僕。
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目が覚めてしまった。ああ。残念。
通り過ぎていく異形のものはきっと失敗作なのだろう。
ずっと、落ちている。もう抗うこともなくなってしまった。ただ、眺めるだけ。横を過ぎていく人間のなりそこないの化け物を眺めるだけ。終わりが来る気配がない。
時折、僕と同じ容姿をしたやつが死んでいる。
こいつも失敗作なのだろうか。でも、こいつが、どんな奴より化け物に見える。
1度でいいからお目にかかりたいものだ。
神の生き写しの美しい少年がいるという噂が村中に広まった。村の人達は会ったこともない彼を崇め奉った。盲目に。そして段々と話は大きくなっていき、教会の人達が彼を神だと公表した。
僕はよく教会に神への供物を捧げていた。木の実や生き物の肉片や虫の亡骸。神は喜んでくださると信じていた。
その日も僕は教会へ供物を捧げに行った。そして少年と出会った。白で統一されているのにどこか派手な感じがする服を纏った少年が僕に話しかける。
「なにをしているの?」
僕は神に供物を捧げていると言った。すると少年は言った。
「僕はそんなもの食べないよ」
嗚呼、なんだ、ただの人間じゃないか。僕の神様は一体どこにいるのやら。