あなたがいたから、私はこれまで頑張れた。
でも、頑張ったのに、あなたが目の前から居なくなってしまって。私の極彩色の世界はたちまちのうちにセピア色になって、色が分からなくなった。思えば、ずっと私に色んなことを教えて、助けてくれて。私はちっともそのお返しが出来てないのに。でも、私は、また、あなたに会いたくて、あなたの隣に立ちたくて。
私は、その行動をとった。
君がいたから、私は頑張れる。
君を置いていくのは少しだけ心苦しい。でも、それで君が幸せになれるなら。私はその選択肢をとろう。私は、今までたくさんの恩をもらった。それを今、返すべきだ。
さようなら、君。幸せでいることを願っているよ。
そのはずだった。居ないはずの君は、私を見つけてくれた。
私のためにと、来てくれた。とても驚いたのは当たり前で、でも私にまた会いたいからと言ってくれて。とても嬉しかった。だから私は、これからも頑張れる。
『あなたがいたから』
1年前の自分は、とても自堕落だった。
それを見ていた周りの人達にとても焦らせようとされた記憶がある。まぁ大学は行きたいなぁ…とぼんやりとしか考えていなかったからか、どこそこに行きたい!みたいな志望校を決めて、本格的に勉強しだしたのはそのおよそ1,2ヶ月後で。そこからも普通の受験生では有り得ないような短時間しか勉強せず、家では変わらずごろごろして。でも苦手単元まで絞った勉強の甲斐あってかなんとか合格までもっていって。ちょうど1年前の自分はこんなふうに頑張って楽しんでる今を微塵も想像しなかっただろうが。
今ではちゃんと人間らしい正しい生活ができているだろうか。
少なくともあの自堕落で意識が薄かった生活よりかは人らしい生活をしてると信じたい。
__これは、コロナ禍から閉じ篭ってしまった人のハナシ。
『1年前』
好きな本が何か知りたい。
そういう連絡が来たのがつい数年前。当初は急で、何考えてるんだ?と疑うほかなかった。だって、その時の僕は全くといっていいほど本を読まなかった。観たいものの大抵はドラマやアニメ化していて、原作だとか気にせず見てきた。だから好きな本と聞かれて、僕はキョトンとしていた。好きな本なんてものは本を読まないから一切ない。確かあの時の僕はそう返したはず。
あれから君に色んな種類の本を薦められて、最初に意味がわからなかった言い回しも次第に分かってくるようになって。
初めて本が面白いと思えるようになった。
どうやら僕はなかなかに特殊な読み方をするらしい。
言語化するのも難しいが、僕の読み方を説明しよう。
主に小説での読み方になるのだが、その小説を読んでると、頭の中で、映画やアニメみたいに、かなり鮮明に映像として写し出される。なんなら声や物音、SEやBGMとかまでかかる。それの影響か、あまり周りの様子が分からなくなってしまう。おかげで何度乗り過ごし、時間とお金を無駄にしてしまったか。それでも今では読むのを辞められないのだから不思議なものだ。
そんな本の面白さを教えてくれた君は今は別の進路を歩むことになってしまって連絡があまり出来ないが。
数年前に来た本が好きかという質問に今の僕は小説が好きだと答えるだろう。
なぜなら、まだ僕が見知らぬ世界の色んな面を魅せてくれるから。すっかり僕はこの小説たちの魅力に取り憑かれてしまった。君のおかげだよ、ありがとう。
『好きな本』
まだ暗い、けど少しずつ白みだしている空を横目に、ひたすら目の前の道を歩き続ける。まだ間に合う。調べた日の出の時間はもう少し先の時刻を示していた。だから一応、日の出はまだ、なはず。
ようやく登れた山頂にて。日はまだギリギリ昇っていなかった。セーフ。日が昇っていく様子を見ながら、ぼんやりと体の芯が温かくなっていくのを感じる。それを感じながら、ゆっくり深呼吸をする。周りに人はいない。この場にいる僕一人だけが今この朝日の温もりを感じてリラックスしている。
日が完全に地平線から離れてしばらく、僕は朝食の準備をしていた。朝食の中身はご想像にお任せしよう。決して覚えていないとかそういうのではない。
出来た朝食を食べながら、たまにはこういう風にのんびりするのもいいな、また登ろう。と思うのだった。
珍しいね、朝早く起きるなんてとても苦手で、起きれたとしても世間的には絶対的に遅いとされる時間にしか起きれなかったっていうのに。
ちなみに早朝の登山から帰ってきて速攻で夕方まで寝た。朝日の温もりをこの僕の身体に閉じ込めながら。
『朝日の温もり』
私はあの時、岐路に立たされていた。
そう気づいたのはいつだったか。誰かが、自らの人生を振り返って話しているインタビューを見た時か。それとも、今こうして岐路のことを考えている時か。
私にはまるで他人事のような、完全に自分事とは思いきれなかったあの選択肢は、私の今を決定づけるものだったのだろう。とはいえ、私にまたそのような岐路に立たされた時、私は今自分が岐路に立たされてると気づくことは無いだろう。
だって、私には自分事のようにちゃんと感じることは出来ないだろうから。これまでも、これからも。何度やり直せるとしても。
『岐路』