音の夢

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好きな本が何か知りたい。
そういう連絡が来たのがつい数年前。当初は急で、何考えてるんだ?と疑うほかなかった。だって、その時の僕は全くといっていいほど本を読まなかった。観たいものの大抵はドラマやアニメ化していて、原作だとか気にせず見てきた。だから好きな本と聞かれて、僕はキョトンとしていた。好きな本なんてものは本を読まないから一切ない。確かあの時の僕はそう返したはず。
あれから君に色んな種類の本を薦められて、最初に意味がわからなかった言い回しも次第に分かってくるようになって。
初めて本が面白いと思えるようになった。

どうやら僕はなかなかに特殊な読み方をするらしい。
言語化するのも難しいが、僕の読み方を説明しよう。
主に小説での読み方になるのだが、その小説を読んでると、頭の中で、映画やアニメみたいに、かなり鮮明に映像として写し出される。なんなら声や物音、SEやBGMとかまでかかる。それの影響か、あまり周りの様子が分からなくなってしまう。おかげで何度乗り過ごし、時間とお金を無駄にしてしまったか。それでも今では読むのを辞められないのだから不思議なものだ。

そんな本の面白さを教えてくれた君は今は別の進路を歩むことになってしまって連絡があまり出来ないが。


数年前に来た本が好きかという質問に今の僕は小説が好きだと答えるだろう。

なぜなら、まだ僕が見知らぬ世界の色んな面を魅せてくれるから。すっかり僕はこの小説たちの魅力に取り憑かれてしまった。君のおかげだよ、ありがとう。
『好きな本』

6/16/2024, 8:57:24 AM