夢が覚める前に、今何事もなく生きていることがどれだけ幸せな夢であるか、気づいておきたい。
どうして、いま私、刺されてるんだろう?
誰だろうこの人、知らない人。
ただ私、ショッピングモールにともちゃんと買い物に来てて、
お手洗いに行ったともちゃんをまってて、、
いたい、いたいな…
ふと、刺されている私を取り巻く、
スマホを掲げる人達が目に入った。
え、スマホ持ってんなら、警察とか救急とかに連絡してよ!
犯行現場なら盗撮OKなの??
ねぇ!やめてよ!撮らないで!
こんな姿撮られたくない!!
なんで私こんなめに合わなきゃいけないわけ????????
なんで私見世物みたいにあつかわれてるわけ?
これが不条理ってやつ?
視界がぐにゃぐにゃしてきた、もう、死ぬのかな私―――
――――【 殺害された女性はこのショッピングモールで犯人の男に刺されたようです。こちらが、”事件当時の映像”です 】
「ごめん、お前の気持ちには答えられない。」
はっきり。さっぱり。ばっさり。
言われてしまった。
やはり、現実は漫画や小説のようにはいかない。
どうして期待してしまったんだろう。
どうして、伝えてしまったんだろう。
後悔が身体中を駆け巡り、気持ちの悪い熱が生じる。
「え…と、な、なーーーんちゃってーー!引っかかってやんの〜!
なーに本気にしちゃってんのさぁ」
ぽかんと口を開けた君はみるみる紅潮していく。
「お前が俺をすきなんて、ほんとうに悪い冗談だな!悪趣味だぞ」
と怒る。おどける僕をこづきながら、「お前はいつもいつも――」と小言を言う君。
泣いてなんかない。
「僕、悪趣味なんだ。」
君に聞こえないよう、僕はぼそりと呟いた。
怖がらないで、怖がらないで!
ただの人間だよ
同じ人間!
その中身がちょっと違うだけなんだよ!
真夜。君と最後のデートの帰り道。
「見て見て、星が綺麗」
僕の腕を引き寄せ、天を指をさす君。天真爛漫という言葉がぴったりな君はあまりに無邪気で、愛らしい。
「今日で別れないといけないなんて、信じらんないね」
「だって、それは―」
僕が言いかけると、
「わかってる。」と哀しげに言った。
両手で優しく君の頬に触れる。
君の瞳から、街頭に照らされ涙がキラキラと流れた。
「流れ星みたいだ。」