「俺はやってない!あいつが勝手に転んだんだ!」
彼女の最後の瞳は安らかでしたか。
恐怖に打ちひしがれていませんでしたか。
「ですが、あなたの指紋が検出されています」
彼女は最後なんと言いましたか。
彼女は泣いていませんでしたか。
「……殺すつもりはなかったんだ!!!」
殺すつもりはなかった、死ぬとは思わなかった?
殺した事実は変わらないのに?
「―傷害致死罪」
「…ざけるな!ふざけるな!」
「傍聴席、静粛に。」
分かります分かります分かります。
殺意が無ければ殺人罪ではないことぐらい。
分かります分かります分かってます。
僕らは法廷で声を出せないことぐらい。
僕は、今日も尋ねられた。
「ねぇねぇ君ってさ、いわゆるバイってやつなんでしょ?(笑)」
人は知らない事をもっと知りたいと思う動物だ。
自身が理解しえないものが現れた時、『拒絶』又は『探求』をする。
「俺のことは狙わないでね(笑)」
人は大変愚かな動物だ。
所詮自分の尺度でしかものが見れない。大変利己的。自己中心的。
知りたいという欲求のベクトルを間違えれば、相手の心を傷つけてしまうということも知らない。
「……………はは。」
乾いた笑いしか出ない。
僕たちは、『あれ』から目を逸らして生きている。
『あれ』を直視すると不安でしょうがなくなってしまうから。
「ミサイルだ!」
「水素爆弾だ!」
「銃声が聞こえる!」
「『敵』だ!!!!!!!!!」
「今にも殺されるかもしれない!!」
平穏な日常は『悲惨な現実の叫び』から目を背けることで存在する。
平穏は『恐怖』や『擾乱』があるからこそ存在している。
僕らは『あれ』をじっと見つめ、持たなくてはならない。
平穏でなくなる勇気を。
心から平和を願う当事者になる勇気を。
日々陰口を言い合い、喧嘩をし、人を殴り、戦争を繰り返し、憎しみ合っている現実。
愛で世界を救うのなら、
愛で世界を平和にするのなら、
一人一人が当事者にならなくてはならない。
全ての人間が、好き嫌いの感情を超えて、全ての人を愛さなければならない。
もしも、あの日僕の気持ちを伝えていたら、
過ぎ去った君だけを抱きしめる日々はなかったのかな。
「あの頃俺も好きだった」
なんて、遅いよ。あらゆるしがらみが僕の手を掴んで、手放しで喜ぶことが出来ない今。
振り向いても無意味でしかないのに、僕は今日もifを使う。