空想

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5/21/2024, 4:05:19 AM

私の危機に駆けつけてくれる彼。
いつもギリギリでハラハラする。
でもね、必ず助けてくれるってわかってるから安心するの。

今だって見守ってくれてる。
私からは見えないけど、あなたから私は見えている。
貴方見たさに、自ら危機にさらされることはしないけど、どうしても貴方をひと目でもいいから見たい。
ねぇ、出てきてよ。

5/18/2024, 3:53:38 AM

満天の夜空を眺めれば、今日あった嫌なこともどうでも良くなる。
この夜空はじっくりと長い時間をかけ、少しずつ変化する。現代人は短い時間を忙しなく過ごし、突然大きな変化に襲われる。
多くの人はこの綺麗な夜空を見ることができない。
僕はこの夜空の存在に気づけた、数少ないうちの一人。そう思えば、この時間が愛しく思える。

皆が夜空を見上げれば、平和になるだろう。
僕は信じてる。

真っ暗な闇の中でも、星たちは輝いてる。それに気づけば、暗闇でもへっちゃらだ。

大昔の恐竜も、江戸時代の人も、令和の人も見ている夜空。

北に住む人も南に住む人も山で生きる生き物も海で生きる生き物も見ている夜空。  

星たちも見ている僕ら。



そろそろ寒くなってきたし、帰ろう。
来た道を引き返した。

5/12/2024, 7:33:57 AM

《僕はっ君を愛している!!》

《私もよ!!》

こんな古臭い映画を見たのはいつぶりだろうか。

どこかの国でいつかの時代でこんな事する人本当にいるのだろうか。

ポップコーンを鷲掴み、大きな口に入り込む。

二人の別れで終わった。何ともモヤモヤする終わり方だ。

エンドロールが流れ始め、席を立つ人がポツリポツリ出てきた。 

真っ黒な背景に映画に携わった人々の名前が止まることを知らず流れていく。

誰も制作陣になんて興味ない。もし、映画が終わって残る人がいるのなら、シークレットムービーを求めている人だ。
もしくは、制作陣、本人。

私は、でてくる名前を熱心に眺める唯一の一般人だろう。 

知らない名前ばかりだけど、この映画を作ったからには凄い人に違いない。

突然ある一つの名前に目を奪われた。

あれは、私の名前。

知らないはずの名前だった。

走馬灯のように流れてくるもう一つの記憶。

カットの音がかかり、緊迫した空気が一気に緩んだ。

私の心臓は落ち着きをなくしていた。

大切なシーン。二人が愛を叫び、別れるシーン。

主役は存在しないスポットライトに照らされ、私の視線を独占していた。

なんて、素敵な人でしょう。

役に恋したのだ。映画の登場人物に。

あのヒロインのように愛を叫びたい!
そう願えど、彼は現実に存在しない。居るならば彼になりきったアクター。

そして、彼を思い続けてそのまま生涯を終えた。

また、同じ道を辿るのだろう。

行き場をなくした愛の叫びは声にならないまま、溶けていった。





5/10/2024, 12:47:13 PM

黄色、赤に白。緑いっぱい。青いっぱい。
ボクはとんでゆく。あてもなく、ただ、ワクワクするほうにスキップしていく。

こんにちは、ネコさん。こんにちは、カラスさん。
こんにちは、こんにちは。

ネコはひなたぼっこをして、カラスはおさんぽをしている。

みんなジユウだ!
ボクらがしたいことをするまいにち。

こんにちは、ニンゲンさん。ナニをしているの?

こんにちは、モンシロチョウさん。私は仕事をしているのよ。

しごと?

そう、この箱を遠くに運ぶのよ。

たのしいの?

いいえ、箱が重くて沢山あるから辛いわ。

なんで、シゴトをするの?ツライならやめなよ

私は働かないと、生きていけないの

それはカナシイね

でも、いいこともあるのよ
この箱を届けたら皆喜んでくれるの。

そっかぁ。ボクもシゴトしてみたい!

あら、もう仕事しているんじゃないかしら

してないよ?

貴方が毎日おはようって言って、色んなところで飛び回って、元気を届けてるのよ

そうなんだ!ボク、シゴトをしてたんだ

私も貴方に元気をもらって今日も働けるの。
ありがとう

わーい!

きょうもみんなにゲンキをとどける

おはよう、おはよう、おはよう

5/3/2024, 1:50:24 PM

チリーン

肌にべっとりついた汗が遠くからやってくる風に当たり、僕はぶるりと体を震わせた。

「たくぼう、これで汗を拭いなさい。」

さっきまでテレビを見ていた爺ちゃんが白いタオルをもってきた。

「ありがと、爺ちゃん」

爺ちゃんはよっこらっしょっと隣りに座った。
しばらくして、爺ちゃんが話しかけてきた。

「たくぼうは好きな女いるのか」

「急にどうしたの、いないよ」

「本当か?」

爺ちゃんは僕の目をそらさず、真剣な顔をする。
本当は僕は好きな人がいる。
それを(多分気づいているけど)爺ちゃんに言うのが恥ずかしかった。
 
「そうか。でもまあ、好きな人ができたらアタックするんだぞ」

「わかったよ。でも何で急にそんなこと聞いてきたの?」

「昔のことを思い出したんだ。わしが小学生の頃だった。」

それから爺ちゃんは昔の話をしてくれた。

「早く〜!置いてくよぉ」

「待ってよー」

赤いランドセルを背負った女の子が数百メートル先に頬を膨らましながら待っていた。

全速力でその子のもとまで行き、その場に座り込む。

「ちょっとここで座らないでよ、休むならあのベンチで休も」

指さしたのは、駄菓子の前にあるベンチだ。
重い体を起こし、駄菓子屋のベンチに座った。

「学校から帰ってすぐ、集合って言ったよね」

「ごめん、母ちゃんに叱られてたんだ」

「あー、テストの点数悪かったもんね」

今日は、神社で生まれた子猫を見に約束をしていた。
しかし、この日に限って母ちゃんに怒られてしまった。

「十分休んだし、行こ!」

神社に行ってみると可愛い子猫が待っていた。
子猫たちと遊んでいるうちに日が傾き始めた。

「遅くなってきたし帰ろう?」

「そうだね」

帰り道、女の子はポケットを漁って、慌てだした。

「どうしよう、落としてきちゃった」

「何を?」

「とっても大切なものなの。多分神社にいるから先帰ってて」
 
「でもこれから戻ったら家に変える前に日が落ちるよ」

止めたが言うことを聞いてくれず、結局僕だけ先に帰ってしまった。

その日の夜、その子の父が僕の家を訪ねてきた。 
どうやら、まだ帰ってきてないらしい。
 
その日を境に彼女を見ることはなかった。





....

「これはわしの憶測だが、なくしたというのは、わしが小学生になる前にあげた貝殻かもしれん。」

「爺ちゃんはその子のことが好きだったんだね」

「婆さんには内緒だぞ」


長い夏休みが終わり、学校が始まった。

ランドセルに教科書をしまって帰ろうとすると、隣の席の子が話しかけてきた。

「近くの神社で子猫が生まれたらしいから家に帰ったらすぐいつもの場所に集合ね」

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