《僕はっ君を愛している!!》
《私もよ!!》
こんな古臭い映画を見たのはいつぶりだろうか。
どこかの国でいつかの時代でこんな事する人本当にいるのだろうか。
ポップコーンを鷲掴み、大きな口に入り込む。
二人の別れで終わった。何ともモヤモヤする終わり方だ。
エンドロールが流れ始め、席を立つ人がポツリポツリ出てきた。
真っ黒な背景に映画に携わった人々の名前が止まることを知らず流れていく。
誰も制作陣になんて興味ない。もし、映画が終わって残る人がいるのなら、シークレットムービーを求めている人だ。
もしくは、制作陣、本人。
私は、でてくる名前を熱心に眺める唯一の一般人だろう。
知らない名前ばかりだけど、この映画を作ったからには凄い人に違いない。
突然ある一つの名前に目を奪われた。
あれは、私の名前。
知らないはずの名前だった。
走馬灯のように流れてくるもう一つの記憶。
カットの音がかかり、緊迫した空気が一気に緩んだ。
私の心臓は落ち着きをなくしていた。
大切なシーン。二人が愛を叫び、別れるシーン。
主役は存在しないスポットライトに照らされ、私の視線を独占していた。
なんて、素敵な人でしょう。
役に恋したのだ。映画の登場人物に。
あのヒロインのように愛を叫びたい!
そう願えど、彼は現実に存在しない。居るならば彼になりきったアクター。
そして、彼を思い続けてそのまま生涯を終えた。
また、同じ道を辿るのだろう。
行き場をなくした愛の叫びは声にならないまま、溶けていった。
5/12/2024, 7:33:57 AM