大好き
大好き。
僕が心の底からそう言えるのは、きっと君だけ。
深海を漂っているような僕を、
君だけが繋ぎ止めていてくれた。
君を見つけた時、
初めてこの藍のなかに愛が生まれた気がした。
ああ、でも。
もう、終わりだ。
僕が死んだら、
君は悲しむかな?
悲しまないのも嫌だけど、
君が悲しむのはもっと嫌だな。
君は笑顔が似合うから。
だから、さいごに
この手紙だけ残していくよ。
中身は、君以外の誰にも見せないでね。
だって、気恥ずかしいじゃないか。
『君へ。』
薄れゆく意識の中、最後に思い出すのは。
叶わぬ夢
叶わないと分かりきっている夢なら、
初めから持たない方が良かった?
それでも、夢見続けることをやめることはできない。
いつもの白い駅のホーム。
空いた教室の隣の席。
ふと視線を感じて振り向く背後。
そのどこにも、君はいない。
でも。
夢を、諦められない。
諦められないから、夢なのだ。
だから、君の背中を探すことをやめない。
君の影を追うことをやめない。
涙が頬を伝う僕の足元には深く影が落ちていた。
花の香りと共に
初めて出会った君。
桜の木の下、
幼さの残る顔ではにかんでいた。
桜の香りに包まれた君を見た瞬間、
時が止まったように感じたことを
つい最近のように覚えている。
君とお別れの時。
安らかな顔で微笑んでいた。
胡蝶蘭に包まれた君を観た瞬間、
君の死という偶像が唐突に形を帯びた。
それからのことはあまり覚えていない。
あの日の君は、
あの日のまま、
桜の花の香りと共にいつまでも。
心のざわめき
心がざわめく。
嫌な予感が、胸騒ぎが、する。
誰かの悲鳴。何かのサイレン。
何のサイレンかなんてわかりきっている。
でも、受け入れることなどできなかった。
振り向く。
血が。血塗れの、君が。
君の赤が灰色のアスファルトに解ける。
なんで。なんで私を庇った?
私は君さえいればよかったのに?
ふざけんな。
私は君を許さない。
私を1人にした君を。
最期の時、笑っていた君を。
そんな顔されたら、怒れない。
そんな顔されたら、消えれない。
こんな世界なら…
何度思っただろう。
でも私は君のいない今日を生きる。
いつか君に笑顔で迎えてもらうために。
君を探して
ねぇ、君は今どこにいるの?
いるはずもない、いつも通りの白いホーム。
人混みの中に君の影を探す。
真白いホームが、なぜだか灰色に見えた。
君はここにはいない。
けれど僕は惰性的に毎日を過ごす。
君がいなくても、時は僕を置いていってくれない。
当たり前にご飯食べて、当たり前に仕事する。
それだけのことが、君がいないだけでこんなにも。
帰り道。
ふと空を見上げると星の光が降り注いでいた。
新月で、星がよく見える夜だった。
君も、この空を見上げているのかな。
同じ空の下、僕らは…。