透明
いつも明るくて、
赤やオレンジを纏っていた君。
君の横に並ぶことのできない僕は、
くすんだ、深緑という色といったところ。
それも、何色なのかはっきりしないような。
いつも明るくて、
赤やオレンジを纏っていた君。
いつも僕の憧れの的だった。
熱いくらいの憧憬の中、生きていた。
その君は、もう目を覚ますことはない。
そう告げられた時、僕は何を思っただろう。
白い衝撃のあまり、何も覚えていないや。
ピクリとも動かない白く染まった君は、
透明に見えた。
僕の心まで、透けていきそうなほどに。
終わり、また始まる
おめでとう
お世話になった、大好きな大好きな3年生。
でも、彼らがいつもの笑顔で
登校してくることは、もう、ない。
ありがとう。
これからは、私たちが。
おめでとう
緊張した面持ちの、これから関わる新1年生。
でも、去年は私たちが硬い表情で
ここに初めて足を踏み入れたのだと、
感慨深く感じる。
私たちの次は、彼らが。
繰り返し、次は私たちが。
その次は彼らが。
そのまた次も…。
終わり、また始まる。
星
星に手を伸ばしてみる。
見上げればそこにふたつの小さな手。
透き通るほど深い藍の中に瞬く無数の星。
涙の跡が残る僕に君は言った。
「あのね、もう会えなくなっちゃった人たちはね。」
"お星様になって見守ってるんだ"
だから星はきれいなんだよ。
だれかを大切に想う気持ちが星になってるから。
君はもう片方の手を
僕の背に置こうとして、やめた。
透き通るほど深い藍に、
ただひとりの君が透けていく。
"だから、ずっと見守ってるから、平気だよ"
君の声が、聞こえた気がした。
もう触れることも、
話すことも、
笑い合うこともできない、
君の、声が。
僕の透明な青い涙と共に解ける。
もう、もどらない。
願いが一つ叶うのならば
願いが一つ叶うのならば。
その問いにある少年は
「ヒーローになりたい!」
無邪気に答えた。
願いが一つ叶うのならば。
その問いにある青年は
「好きな子と結ばれたい」
顔を赤らめて小さく答えた。
願いが一つ叶うのならば。
その問いにある中年は
「自由に生きたい」
疲れの見える顔で
ため息をつくように答えた。
願いが一つ叶うのならば。
その問いにある老人は
「もう十分幸せに生きたから、
みんなが楽しく過ごしてくれればそれでいい。」
穏やかで優しさに満ち溢れた声で答えた。
老人は語った。
『今まで何度も色々なことを願ってきた』
『でも、何より大事なのは』
ヒーローになることでも、
好きなこと結ばれることでも、
自由に生きることでもなく。
『自分の人生を死ぬ前に
振り返った時、満足かどうか。』
かつてヒーローを志し、
好きな子と結ばれることを望み、
自由に生きることを望んだ老人は。
最期に他の人のために願った。
嗚呼
嗚呼、その一言に込められた意味は。
言葉にできないほど嬉しい時、
言葉にできないほど絶望した時…
挙げていけばきりがないだろう。
でも、人間って、本当に心を動かされた時には
そんな難しい言葉は話せないかもしれない。
生まれた時だって言葉は話せないし、
死ぬ時だってほとんどは言葉を話せないと思う。
なら、心が動く、震えるような時も
言葉を発せないのかもしれない。
だからこそ、一言一言が大切だと思う。
言葉を発せられる時、どんな言葉を使うか。
それは一見なんてことのないこと。
でも、その言葉遣いこそが
あなたの運命の道をほんの数度角度を
変えさせる唯一の方法だと思う。
今からでも、身近な人と
いつもより深く会話を交わしてみたらどうだろう。