MonaKa

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6/5/2024, 9:56:25 PM

テーマ・誰にも言えない秘密 《ゆるりと小道を4》

「りさ、、、あのね。私相談したいことがあるの。」
冷やし中華を食べ終わるごろだった。店の雰囲気はいつもと変わらない騒がしさだった。しかし、私たちのテーブルには静かに張りつめた緊張があった。
「どうしたの?」なごやかな感じで聞いてみる。
「、、、私ね。音大に行ってるでしょ?次に自由課題として伴奏をつけて演奏するんだけど、りさに伴奏を頼みたいの。」
それを聞いた時に電閃のように思い出が頭の中に浮かんだ。
指を怪我してしまった。体育の時だった。大会は辞退せざるおえない。完治するまで時間がかかった。指が曲に追いつかない。どうしよう、、、私はもうピアノを弾けない、、、
この様子を見たみさは悲しげな表情で、まるで子犬のように返事を待っていた。

3/13/2024, 7:42:55 AM

テーマ・もっと知りたい 《ゆるりと小道を3》

のどかな田んぼの街並みを見ながら蒸し暑い小道を2人。みさとりさが1本の日傘に入って歩いている。めざすは高校生の頃よく通っていたラーメン屋。ここからバス停まで歩いて30分。バスで40分。そこから歩いて20分。気が遠くなるほど時間がかかる。でも今は2人だからきっと静かで穏やかな時間になるだろう。みさといろんな話をした。大学で何を学んでいるのか。サークルは楽しんでいるか。単位は大丈夫かなど、たくさん。バスを降りた後はただ気まずくない沈黙が静かに座っていた。
「りさ。もうすぐだよ」
「うん。そうだね。」
お互いヘトヘトになっていた。やっとの思いでたどり着いたラーメン屋で冷やし中華と生ビールを頼んだ。注文を言い終えると、店主は「また2人の顔が見れて安心したよ!」と元気な声で言った。しばらく疲れたねと言い合って静かな雰囲気が流れていた。そんな中みさが話を切り出した。
「りさ、、、あのね。私相談したいことがあるの」
「どうしたの?」と言いかけたところで店主が
「お待ちどうさま!」と冷やし中華と生ビールを持ってきた。枝豆をサービスで出してくれた。
「食べよっか!」さっきまでの深刻さとは打って変わってみさは元気だった。無理しているのが直ぐにみてとれた。
「後で聞くからね」と言って、冷やし中華をすすった。生ビールののどごしは最高だった。まだ腑に落ちないものが詰まったままだった。もっと深くまで知りたいと願うのは不躾なのだろうか。あれだけうるさいセミも、もう気にならなかった。

2/29/2024, 4:39:43 AM

テーマ・遠くの街へ 《ゆるりと小道を 2 》

ガタゴトと電車が揺れる。やはり、都会の電車の乗り心地とは雲泥の差がある。ドアがキィーという音を立てて開く。あの黒板に爪を立てる悪魔の所業のような、そんな音。
しかし、私はこれらに懐かしみを憶え、さらには親しみさえあった。
【みさ・あとどれくらい?】
【りさ・あと1時間くらい】
【みさ・d(ゝω・´○)OK】
上京してから早1年。みさと再会してから早3ヶ月。時の流れは歳を重ねるごとに価値が薄れていくような気がする。
あともう少しでみさに会える。そう思うとソワソワしてワクワクする。東京には無い楽しみのひとつだ。
『ギキィー』過去一酷い音を立ててドアが開く。電車を下りた先には懐かしい風景が広がっていた。中学、高校生の時はこのド田舎が嫌で嫌で仕方がなかった。早く上京してオシャレな大人になってやると闘志を燃やしていた。
駅から出て待ち合わせの場所まで行く。近くの木にセミが止まっていた。このうるさいセミの鳴き声には流石に腹が立った。
(たしかこっちだったような。)思い出しながら待ち合わせ場所まで歩く。上手く思い出せないのでスマホに頼りながら歩く。まだセミが鳴いている。
「りさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」セミのうるささを一瞬で吹き飛ばすほどの大声で私を呼ぶ声が聞こえた。みさだ。
居酒屋でこんなにも打ち解けられたのかと思うとやっぱり嬉しかった。
遠くの街へ。親友と一緒に小道を歩き出す。

2/26/2024, 1:37:04 PM

テーマ…君は今 《ゆるりと小道を 1 》

進学と共に上京した。
最初は地元を離れてばかりで寂しい時も沢山あったし、いきなり1人になるのはトラブルが多くて多忙な日々が続いていた。それでも新しい環境は新鮮なものが多かったし、友達も増えた。最近はバイト代を貯めながら程よくショッピングを楽しんだり、サークルの飲み会に参加できるほどにはなった。
そんな日々にも慣れてきて、バイト終わりの深夜の帰り道にLINEの通知音がなった。きっともうすぐ行われる定期飲み会の連絡だと思って家に着くまで既読を付けなかった。
「はぁ〜。バイト疲れたぁ」とため息をこぼす。拾ってくれる人はいない。虚無の時間がただ流れていく。
10分くらいダラダラしたあと起き上がらずにスマホを取る。さっきのLINEを見るためだ。
【みさ・ 久しぶり。起こしちゃったらごめんね。】
「ん?」誰だろう。【みさ】という名前。寝ぼけて頭が働かない。誰だろう。そのみさという人の顔が出てきたのはその3秒後くらいだった。
みさは地元の友達だ。いや、親友と言っていい。なぜ仲良くなったかは分からない。ただ笑いのツボがめちゃくちゃ合っていた。ずっと一緒という訳でなく程よい距離感を保てていた。
【りさ・ 起きてるから大丈夫だよ。】
すぐに既読が着いた。今何をしてるんだろう?
【みさ・ よかった!今度東京行こうと思ってるの。】
【りさ・どうして?】
【みさ・ 小旅行みたいな?もしよかったら久しぶりに遊ばない?】
少し考える。高校生の時どんなふうに遊んでたっけ。
【りさ・いいよ。どこに行く?】
【みさ・うーん、、、】
【みさ・りさの近くの大学のカフェにしよ】
【みさ・もしオススメあったら教えて欲しいな】
【りさ・d(ゝω・´○)OK】
【りさ・(*˘︶˘*)オヤスミナサイ.。.:*】
【みさ・ヾ(*´・ω・`*)おやすみなさぁ~ぃ】
業務的にこなしていたような気がする。ぼーっとしていたら寝ていた。

ーー1週間後、私の大学の近くのRusKというカフェで待ち合わせた。
「りさ!お待たせ」
そう言ってかけてきたみさは高校生の頃とあまり変わっていなかった。
最初は緊張したが、思い出話を持ってくると意外にも話が続いた。楽しかったなぁ。そのあとは店を変えて、最終的には居酒屋で解散となった。少し酔いも回っていたのだろう。私はみさにこんなことを聞いた。
「びっくりしたよぉ〜。いきなり連絡してくるから。でも今日は楽しかったからまたのもぉーね」
みさは少しだけ深刻な顔をして言った。
「最近ちょっと疲れちゃってさ、、、ほら、大学って飲み会多いし、生活費稼ぐのもしんどいから。久しぶりに羽を伸ばせたらなって、こんな楽しいとは思わなかったけどね。」
少しだけ静まった。私は「次は私から誘うよ。だから地元のいい店探しといてよね。」と。みさは優しくうなずいた。その日は解散となった。

ーーみさはその2日後に地元に帰ったらしい。小旅行の写真を送ってきた。
みさと会ってから1週間経つ。まだあの楽しさは忘れられない。大学に行くバスに揺られながらみさは今何をしているのだろうと思いを馳せた。