テーマ・遠くの街へ 《ゆるりと小道を 2 》
ガタゴトと電車が揺れる。やはり、都会の電車の乗り心地とは雲泥の差がある。ドアがキィーという音を立てて開く。あの黒板に爪を立てる悪魔の所業のような、そんな音。
しかし、私はこれらに懐かしみを憶え、さらには親しみさえあった。
【みさ・あとどれくらい?】
【りさ・あと1時間くらい】
【みさ・d(ゝω・´○)OK】
上京してから早1年。みさと再会してから早3ヶ月。時の流れは歳を重ねるごとに価値が薄れていくような気がする。
あともう少しでみさに会える。そう思うとソワソワしてワクワクする。東京には無い楽しみのひとつだ。
『ギキィー』過去一酷い音を立ててドアが開く。電車を下りた先には懐かしい風景が広がっていた。中学、高校生の時はこのド田舎が嫌で嫌で仕方がなかった。早く上京してオシャレな大人になってやると闘志を燃やしていた。
駅から出て待ち合わせの場所まで行く。近くの木にセミが止まっていた。このうるさいセミの鳴き声には流石に腹が立った。
(たしかこっちだったような。)思い出しながら待ち合わせ場所まで歩く。上手く思い出せないのでスマホに頼りながら歩く。まだセミが鳴いている。
「りさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」セミのうるささを一瞬で吹き飛ばすほどの大声で私を呼ぶ声が聞こえた。みさだ。
居酒屋でこんなにも打ち解けられたのかと思うとやっぱり嬉しかった。
遠くの街へ。親友と一緒に小道を歩き出す。
2/29/2024, 4:39:43 AM