江戸宮

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1/19/2024, 1:58:12 PM

いつもみる朝の情報番組は既に終わってしまった。
急いで髪をセットしたからかアイロンで火傷した。
それもこれも不運なこと全部めざましがいつもの時間にならなかったせいだ。
いつも早めの行動を心がけているがこういうのはどうしようもない。
もしかしたら、あの子、先に行っちゃったかな、なんて約束もしていないのに女々しく考えてしまう。
約束はしていないけれど、途中で彼女が後ろから走ってきてそれをおはよう、と返すのが俺の日常になってしまった

「…はあ、ツイてない」

彼女と一緒に学校へまで歩くあの道、結構気に入ってたのになぁ
思わずため息をついたら、その拍子にドアの角に足をぶつけたので今日はとことんツイてなさそう。


いつも通りあの道をあるく。
あの子がいたらなぁ、なんて考えて直ぐにこんな寒いなか待たせていたら風邪ひいちゃいそう、と直ぐに心配が勝った。
もし俺なんかを待っててくれたら可哀想でしかたない。
そう思うと自然と歩くスピードが早くなる。
…気の所為じゃない。
あそこにいるのって…もしかして、

「あ、先生っ!…よかったぁ、先行っちゃったかと」

いつもの場所にやっぱり彼女はいた。
惜しげも無く晒された白い脚が寒さからかほんのり赤く染まっている。

「貴方…ずっと待っててくれたの?約束、してないのに」

「約束はしてないですけど、もし同じ状況で先生がここで待ってくれたら私嬉しくて死んじゃうなぁ、って思って。朝から先生に会えたら幸せですし!…ぁ、…でも先生は嬉しくない、か。迷惑、でしたか…?」

きゅるっと上目遣い。あぁ、可愛い。可愛くないわけが。
迷惑なんて、とんでもない。君がもしかして待ってくれてたり、なんて淡い期待を抱いて早歩きになった俺も大概だ

「…ううん、迷惑じゃないよ。待っててくれてありがとうね、」

首元のマフラーを掴んでいた白い手にそっと触れる。
指先まで氷のように冷たい。可哀想だ。
カイロでも持ってくればよかった。

「…せんせ、?」

「……冷たい。ねえ、約束しようよ。毎朝8時にここでさ、待ち合わせするの。休む日はLINEでも電話でも」

「せんせいいの…?」

「貴方がいいなら。約束ね、」

俺と彼女の小指がきゅっと絡まって何度が上下した。
この約束をした今俺は寝坊する気がしない。


2024.1.19『君に会いたくて』

1/16/2024, 11:30:10 AM

初めてみた時にすごく美しい人だとおもった。
金色に染まった髪の毛も綺麗な顔を引き立てる一部になっていて、彼だけが物語の世界から飛び出してきたような気がした。
当時の俺は本当に、そう思っていた。
それから俺が彼にくっついて行動し始めて、彼がとても努力家で負けず嫌いなことを知った。
顔に見合わない男ぽいその性格もたまらなく好きだった。

それは気まずい雰囲気の今も変わらない。
いつも彼を綺麗な人だと思っているし、くしゃっと笑うその顔をみると心が震える。
泣いていたら、(彼が泣いている所は見たことがないが)人並み以上には慰めてやりたいと思う。

多分俺はあの人が好きだった、のかもしれない。


2024.1.16『美しい』

1/13/2024, 1:49:43 PM

「ふふ、俺も好きだよ、」

甘いはちみつを溶かしたみたいな声色でそう言われた。
ふわふわで幸せで非現実的な空間である。
瞬時に理解した。これは夢だ、と。

先生と短い電話をしてベッドに入り込んだはいいものの、どきどきとはやる心臓の音が間近で聞こえてまったく眠れる気がしなかった。
でも、先生が早く寝なさい、なんてこと最後に言うから。
なるべく何も考えないようにして目を閉じたらこの有様である。
目の前にはすごくリアルな先生。
夢でもかっこよくて笑った顔がわんこみたいに可愛くて、なんてなんだか狡いなぁ。
うっとりするような瞳を暫く見つめ続けた。

「ねえ、最近キャンプハマっててね?だからあなたも今度一緒に行かない?」

あなたの好きな物俺が作るからさあ、だめ?なんて捨てられる直前の子犬みたいな顔した先生が視界に映る。
いちいちあざとくて心臓がうるさい。
これは夢だってば。夢、ゆめ、

「うぅ……分かりました。」

返事をするとぱあっと顔を軽くした先生はぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。
あ、どうしよう、死んじゃいそう。幸せすぎて。
そう思ったところでぷつんと視界が白んだ。

あぁ、やっぱり夢だった。
もう寝れる気もしないし、早く起きてしまおうかと考えてベッドからでた。



いつもの準備室にて。
話題は最近ハマっている趣味についての話になった。
先生、夢の中ではキャンプにハマっていると言っていたけれど、実際はどうなんだろう。
思ってしまったら聞かずにはいられず気づいたら声に出ていた。

「先生はキャンプハマってるんですよね、?」

「う、うん…あれぇ?俺、貴方にその話したかなあ……」

「え、あ〜、そ、うなんですね、」

不思議だねえ、なんて笑った先生。
夢の中の先生に教えて貰った話だし、なんて思って言ってみたらまさかのまさかだ。
動揺で何だか日本語も覚束無い。
もしかして……、
あれって本当に夢だったんだよね?


2024.1.13『夢を見てたい』

1/12/2024, 1:38:36 PM

「恋の共犯者になれるよ、俺。」

不敵に笑われて先生らしいな、と思った。
一人では持てない気持ちを、二人なら持てるから。
私が燻ったままのこの気持ちさえも先生となら。
そうやってずっとこのまま生きていきたい。


2024.1.12『ずっとこのまま』

1/11/2024, 1:38:23 PM

「さむ……」

今日は起きた時から肌を刺すような寒さに襲われた。
最近だんだんと寒さが厳しくなってベッドからでるのが億劫になる。
最近習慣になってきたバランスボールに乗りながら白湯を飲んだ。

家を出た途端また寒さが身に染みる。
いったい何度寒いと言えばいいのかわからないほどだ。
ぐっと首元のマフラーを引き上げた。
数分歩くと突然ふわり、といい匂いがした。
甘い花みたいな匂い。嗅ぎなれた匂い。

「せんせー、おはようございますっ、!朝から会えるなんてラッキー……、」
「…うん、おはよう。」

突然後ろから声をかけられるのもこうして生徒と学校までの道のりを歩くのも随分慣れたものだ。
努めて普通に返したつもりだったけれど、緊張して声が上擦ったかも。
ああ、かっこ悪い、いい所だけ見せたいのに。

寒い日はモコモコにうずまった彼女がとても可愛くみえて困る。
可愛いだなんて感情、生徒にもつには間違っているのだろうけれど。
あー寒い日なんて嫌だ。思ってはいけない感情だ。
わかってるけど、…たまにぐらいなら許されるかな。


2024.1.11『寒さが身に染みて』

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