少し前を歩く先生が空を見上げる。
急に足を止めたものだから、つんのめって先生の背中に軽くぶつかってしまった。
やっぱり背が高い、いい匂いがする、かっこいい、
気を抜くとそんなことばかりかんがえてしまう。
「先生?どうかしました……?」
「ねえ、貴方もみて……雪だ、」
そう言われて慌てて顔を上げた。
確かに、雪が空を舞ってひらひらと夜空を彩っている。
頬に冷たい感覚がして頬を触ってみると、体温で溶けた雪が頬を濡らしていた。
「ふふ、貴方頭に雪が……」
そう呟いた先生の声は雪にかき消されることなく私の耳に届く。
私へ視線を向けて、頭に乗ってしまった雪を払ってくれたようだ。
指先が触れるだけで心臓が痛い。あぁ、辛い。
「ありがとう……、ございます…」
「いーえ、風邪ひいちゃったら困るしそろそろ学校に戻ろうか、」
私の頭から手を離した先生はすぐに歩き出す。
先生の一挙手一投足にドギマギしているのになんとも思われていないような態度はちょっと傷つく。
「ま、まって!!」
「ん?どうかした?」
「……まだ、…帰りたくないかも、です、っ」
言ってしまった。めんどくさいって思われるかも。
わがままな女の子とか先生嫌いそうだし。
でも、言ってしまったものは取り返せない。
「ふはっ、そっかぁ…じゃあ、もうすこしデートしよっか?」
「……でーと……で、デート!?」
「あれ、違ったぁ?ふふ、…なあんてね。貴方の反応が可愛くてつい、」
「も、もう!……いじわるです…、」
「ごめんね。お詫びに貴方の好きなケーキ、沢山買って帰ろう?」
「……わかりました。ゆるしましょう、!」
私の気持ちに気づいているならいじわるだし、気づいていないとしたら先生はとんでもなく小悪魔なんじゃないか。
先生の新しい一面を見れたことと、デート、?なんて甘い響きの言葉を口にしてくれた先生にまた好きなところが増えてしまったある冬の日。
2024.1.7『雪』
「せんせぇ、本当に良かったんですか?」
隣を歩くいつもとは違う貴方。
紺色のセーターといつもよりちょっと短いスカート。
セミロングの髪の毛はふわふわに巻かれていて、贔屓目なしにもやっぱり可愛いんじゃない?
生徒を可愛いと言ってしまうのは色々良くない気がするけど今日ばかりは許して欲しいものだ。
「良くは無いけれど、まぁ…貴方ならいいかなって。」
またまた会った初詣の帰り、お昼に誘われた。
普段の俺なら生徒からのお誘いなど絶対に断るが彼女となると話は変わってくる。
もし断ってしまったら悲しそうな顔をするのは目にめえているので、新年からそんな顔をさせてしまうのは可哀想だな、なんていう半分親みたいな気持ちで承諾した。
「先生とお昼御一緒できてうれしいですっ!」
「俺も嬉しいよ。貴方は何が食べたい?」
「オムライス、!私大好きなんです、」
「じゃあ……貴方が嫌じゃなければだけど……、俺が作ろうか?」
彼女のキラキラした瞳に見つめられて変なことを口走った自覚はある。
何言ってんだおれ、なんて思っても後の祭り。
「せんせいの手料理……!?幸せすぎてしねる……、」
「っ…大袈裟、……じゃあ家おいでよ、」
もう回避する方法はないようで、
俺だってこの子が生徒でなければ喜んで家に呼びたい。
……まぁ、家ぐらいいいか。弁えているちゃんとした子だし、なんて自分を納得させてそう返事をした。
2024.1.6『君と一緒に』
人は自分が幸せであるうちは自分が幸せと気づかない生き物なのである。
俺はそれを罪深いとも思うし、人間らしいなぁと思ったりもする。
目の前の幸せがいつまでも続くなんて思うのはなんだか呑気なものだ。
そんな日常のなかで、理屈とか屁理屈をとっぱらって貴方だけはどうか幸せでいて欲しいと願うばかり
2024.1.4『幸せとは』
「きれいだねぇ、」
「はい……本当に綺麗です…、」
日の出を目にした先生ははっ、と息を飲んだ。
空気が冷え込んで身震いするほどの朝。
隣には大好きで恋焦がれている先生がいた。
スリムなコートと可愛いマフラー。
「誘ってくれてありがとう、貴方と見れてよかった」
「私、わたしも、…一緒に見られて嬉しい、です」
微笑んだ先生が日の出に照らされてキラキラしている。
好きな人とこうやって偶然ではあるけれど、一緒に日の出を見ることができてもう既にいい一年だが、もっといい一年になりそうだ。
また来年もこうやって一緒に見てくれるだろうか。
先生の隣でみる日の出はたぶん、世界で一番綺麗だった。
2024.1.3『日の出』
今年は先生と色んな場所に行ってみたい
先生の授業の成績をもっと上げて褒めてもらいたい
先生料理が上手って聞いたからそれも食べたい
あとは…先生と同じ職業につけるように勉強を頑張りたい
そもそも、抱負ってこんなのでいいのかな。
もっと立派な…と考えても先生に関係することしか思いつかなかったので割愛する。
「卒業する前に、…先生と付き合っちゃったり!?!」
自分で想像してベットで悶えた。
わたしみたいなちんちくりんにも優しい先生が彼女にどうやって接するのか気になる。
先生、連絡はマメそうだしモテる要素しかない。
どうしよう、連絡先も知らない相手は流石に恋愛対象にはならないかぁ、
あ!そうだ、今年の抱負、連絡先を交換する、これに決定
これなら、夏休みも冬休みも関係なく話せる。
絶対に交換してやる、という強い意志を持ってしまった1月の2日。
2024.1.2『今年の抱負』