記憶は基本的には過去のものだけれど、
単なる「憶(おもいで)」ではなく
「記(しるす)憶(おもいで)」
と書く以上はこの「記す」ことに結構深い意味があるのではないかと思っていて。
たとえ未来のことであっても記しておいて時間がそこに追いついたら記憶として成立して、それを人は目標と呼んだり、あるいは予言と呼ぶのかもしれない。
そんなわけで私の未来の記憶をここに記しておきますね。きっと現実になります。
↓
宝くじが当たったので何に使おうか困ってしまって、とりあえずイオンに行って値札を見ずに好きな服を買ってみた。5900円だった。
次はスタバのトッピングを盛り盛りにしてみたい。
ココロ オドル ワタシ
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かの有名な「月に代わっておしおきよ!」は、本当によく出来たセリフだなと思うのです。
私が似たような言葉を考えてみても、
星に願って懲罰よ!とか
空に誓って天誅よ!とか
風に請われて制裁よ!とか
雲のまにまに成敗よ!とか
雪にまみれて折檻よ!とか
雨の合間に戒めよ!とか。
どうにも取ってつけたような感じが否めません。
それはそれとして、こういうのを考えるのが大好きなんです私は。
【星に願って】
昔持っていたティーンズ小説に「彼の背中を抱きしめたい」というタイトルのものがありました。
主人公が好きになったのはバイクに乗る男の子。
ラスト、想いが成就し彼の背中をぎゅっとしてタンデムするシーンは挿絵も美しく、海辺を走るバイクに二人の重なるシルエット、靡く髪。恋愛に疎い私でも
「ほうほう、これはさぞときめくシチュエーションであるのだろうな」
と想像をかきたてられながら読んだものです。
さて時は経ち、大学時代の彼氏はバイクに乗る人だったので、デートの際に私もバイクの後ろに乗ることと相成りました。
後部に跨り、彼の背中にぎゅっと抱きつくと、エンジン音と共にバイクが発進します。
今、あのときめきシチュエーションが現実に!さあティーンズハートの世界観よ、我が身に降り注げ!!
──結論としましては。
背中に抱きついてバイクに乗るのはちっとも快適ではなく、ときめきどころではありませんでした。
振動が余計に伝わるし、暑いし、風で目が痛いし、髪は乱れるし、楽な体勢とも言い難い。
身をしっかりと起こして後ろのバーを掴み、もう片方の手は運転者の腰かシートに軽く添えるだけ。これが正解なのです。
現実はえてして物語のようにロマンチックには出来ていないものだと知った、19歳の出来事でした。
その彼氏は数年ののちに私の背の君となりました。
通勤でバイクに乗る背の君の背中。抱きつくことはないけれど、明日もいってらっしゃいと見送るのです。
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背の君とは古語で夫のこと。
背の君の背中。
字面だけ見るとちょっぴり回文みたいで面白いですよね。
小学生の頃、父の転勤で引っ越すことになった。
新しい土地では上手く馴染めなかった。
「どこから来たの?」
「◯◯県」
「それってどこ?」
「すごく遠く……」
「ふーん。ねえなんで持ち物がみんな違うの?変なの!」
一人歩く帰り道はいつも引っ越す前の日々を想った。あそこには楽しい思い出があって、仲良しだった幼馴染がいる。それだけが幼い私の支えだった。
時は経ち、成長し、友達もできて、引っ越し先がすっかり「地元」になった頃。
大学生の私はふと思い立ち、かつて住んでいた場所を訪れることにした。
電車に乗って1時間。記憶もおぼろげだが懐かしい土地に降り立ってやっと気付く。
「1時間で着いた?!!」
それもそのはず。引っ越し先は隣の県だったのだから。私が大学へ通うのと同じくらいの時間で行けてしまう距離である。
幼馴染に再会して「こんなに近かったんだね」と笑い合う。
それでも幼い私にとって、そこは二度と会えなくなるくらいの、間違いなく遠い遠い場所だったのだ。