ーアイツは生きている。
俺が生きてるから、アイツだって生きてるにきまってる。
ここではない、どこかで。
そう思いながら、一年、また一年…。
修行をして、手がかりをさがす。
しかし聞く人、聞く人皆、彼のことは名前しか知らない。
変な感覚に陥り、街から逃げるように出ていく。
そしてまた修行をしながら次の街へ。
ふと水たまりに映る泣きそうな自分を見つめる。
不安が心を支配し、流す涙も枯れかけたその時
「…○○?」
沈んだ顔で振り返ると
少し背が伸びて大人に近づいたアイツがいた。
「…やっとみつけた、また一緒に旅に出よう。」
アイツは涙を堪え、震えた声で俺に手を差し伸べた。
「バーカ、どこほっつき歩いていたんだよ。」
止まっていた運命の時計が、また動きだすかように
遠くの街の鐘の音があたりに響いていった。
テーマ ここではない、どこかで
あそこに輝くは、ずっと探し求めていた
創味シャンタンチューブタイプ。
なんと棚の最上位に列をなしているではないか。
凛とした姿は、城を守る近衛兵のように堂々として美しい。
だがしかし、一歩一歩近づくにつれて誘惑が襲いかかる。
味覇、香味ペースト、中華あじ、炒ソース…
幾多の困難を潜り抜け、私はついに目の前までやってきた。
まっすぐ手を伸ばした先に…
背伸びをしてジャンプをして…
あともう少し…指関節一つ分なのに…
取りたいけど、取れない…
そう、届かないのだ…
届かぬ想いを胸に、スーパーの調味料コーナーで佇む私。
呼び込み君のBGMが虚しく聞こえた特売日。
テーマ 届かぬ想い
お気に入りのお茶を淹れて、
大好きなお茶菓子を持って、
木漏れ日の注ぐあの森へ行くの。
着いてすぐにお茶の支度をして、
神様を待つのが私の日課。
神様へ
こちらで休憩しませんか?
こんなご時世だもの疲れちゃうじゃない。
私と一緒にゆっくりしましょう。
と唱えて私はお茶を始めるの。
すると心地よい風がすーっと私の頬を撫でるのよ。
きっと神様が来てくれたんだと思うわ、素敵でしょう。
そんな不思議な彼女は後に、
勇者を助ける聖女になるという事は
まだ誰も知らない。
勇者と愉快な仲間たち
テーマ 神様へ
街を包む汚れた空気やモヤモヤした気持ちも、
昨晩の雨で流れてしまったみたいだ。
丸ごと洗濯したかのように爽やかで、
くしゃくしゃで汚れた自分の靴が逆に目立つくらいだ。
ここを離れて随分と経ったような気がする。
どのくらい帰っていないのかも、
なぜ出ていったのかでさえも
わからなくなってしまったのだから。
でもこの和菓子屋は変わらない。
通り過ぎてすぐの不動産屋も、その向かいの花屋も。
そうそう、古い薬局のある交差点を左、
二本目の路地をすぐ右に入るとそこに二階建ての我が家が
なくなっていた。
快晴の空が虚しく広がる更地。
…私はいったいここへ何をしにきたのだろうか。
そもそもここはどこだろうか。
老人と街
テーマ 快晴
あーあ。
やり場のないこの気持ちをどうしようか。
あーあ。
怒っても泣いても慰めてくれる訳でもない。
あーあ。
ため息ひとつ。
あーあ
昼下がりの公園。
お気に入りのメロンパンを奪って、
トンビは遠くの空へ飛んでいったのであった。
あの日のメロンパン