ぱいなぽう

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4/17/2023, 12:55:15 AM

ーアイツは生きている。
俺が生きてるから、アイツだって生きてるにきまってる。
ここではない、どこかで。

そう思いながら、一年、また一年…。
修行をして、手がかりをさがす。
しかし聞く人、聞く人皆、彼のことは名前しか知らない。
変な感覚に陥り、街から逃げるように出ていく。
そしてまた修行をしながら次の街へ。

ふと水たまりに映る泣きそうな自分を見つめる。
不安が心を支配し、流す涙も枯れかけたその時

「…○○?」

沈んだ顔で振り返ると
少し背が伸びて大人に近づいたアイツがいた。

「…やっとみつけた、また一緒に旅に出よう。」

アイツは涙を堪え、震えた声で俺に手を差し伸べた。

「バーカ、どこほっつき歩いていたんだよ。」

止まっていた運命の時計が、また動きだすかように
遠くの街の鐘の音があたりに響いていった。


テーマ ここではない、どこかで

4/15/2023, 11:23:50 AM

あそこに輝くは、ずっと探し求めていた
創味シャンタンチューブタイプ。

なんと棚の最上位に列をなしているではないか。
凛とした姿は、城を守る近衛兵のように堂々として美しい。

だがしかし、一歩一歩近づくにつれて誘惑が襲いかかる。
味覇、香味ペースト、中華あじ、炒ソース…
幾多の困難を潜り抜け、私はついに目の前までやってきた。

まっすぐ手を伸ばした先に…
背伸びをしてジャンプをして…
あともう少し…指関節一つ分なのに…

取りたいけど、取れない…
そう、届かないのだ…

届かぬ想いを胸に、スーパーの調味料コーナーで佇む私。
呼び込み君のBGMが虚しく聞こえた特売日。


テーマ 届かぬ想い

4/14/2023, 12:35:06 PM


お気に入りのお茶を淹れて、
大好きなお茶菓子を持って、
木漏れ日の注ぐあの森へ行くの。

着いてすぐにお茶の支度をして、
神様を待つのが私の日課。

神様へ
こちらで休憩しませんか?
こんなご時世だもの疲れちゃうじゃない。
私と一緒にゆっくりしましょう。

と唱えて私はお茶を始めるの。
すると心地よい風がすーっと私の頬を撫でるのよ。
きっと神様が来てくれたんだと思うわ、素敵でしょう。

そんな不思議な彼女は後に、
勇者を助ける聖女になるという事は
まだ誰も知らない。

勇者と愉快な仲間たち

テーマ 神様へ

4/13/2023, 2:08:35 PM


街を包む汚れた空気やモヤモヤした気持ちも、
昨晩の雨で流れてしまったみたいだ。
丸ごと洗濯したかのように爽やかで、
くしゃくしゃで汚れた自分の靴が逆に目立つくらいだ。

ここを離れて随分と経ったような気がする。
どのくらい帰っていないのかも、
なぜ出ていったのかでさえも
わからなくなってしまったのだから。

でもこの和菓子屋は変わらない。
通り過ぎてすぐの不動産屋も、その向かいの花屋も。
そうそう、古い薬局のある交差点を左、
二本目の路地をすぐ右に入るとそこに二階建ての我が家が


なくなっていた。


快晴の空が虚しく広がる更地。
…私はいったいここへ何をしにきたのだろうか。
そもそもここはどこだろうか。

老人と街

テーマ 快晴

4/12/2023, 10:09:21 AM

あーあ。
やり場のないこの気持ちをどうしようか。

あーあ。
怒っても泣いても慰めてくれる訳でもない。

あーあ。
ため息ひとつ。

あーあ
昼下がりの公園。

お気に入りのメロンパンを奪って、
トンビは遠くの空へ飛んでいったのであった。


あの日のメロンパン

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